◎「しおき(仕置き)」(動詞)

「し(為)」「おき(置き)」はその項参照。「しおき(為置き)」は、意思的にものごとを客観的に存在化させること。すなわち、ものごとの客観的存在化が何らかの意思の表れ、故意の現れになっている。ものごとを準備する、して世の中に残す、封建する(領有地を与える・その統治管理をまかせる)、国の統治管理をする(そのための取り締まり、処罰もする)、といった意味になる。

「御調度などは、そこらし置かせたまへれば、人びとの装束、何くれのはかなきことをぞいそぎたまふ」(『源氏物語』:(玉鬘(たまかづら)入内に関し)調度類などの準備はできているので、ということ)。

「『いさや(さぁ…どうしたものだろう)、ありもとぐまじう(在りも遂(と)ぐまじく:自分がこの世にあることさえ遂げることはできない)思ひにたる(思いにとある)世の中に、心なげなるわざをやしおかむ(仕置くことは心なげなわざをであろうか)』といへば…」(『蜻蛉日記』:この「仕置き」は、世の中に残しおく、のような意)。

「みさうみふ(御庄御封)など、よにおはしますやうに、しおかせ給へれば、すゑずゑのみかどの御ときにも、あらためさせ給ふことなくて…」(『今鏡』:「みさう・みしゃう(御庄)」は荘園を尊んで言ったもの。「みふ(御封)」は「封建:支配管理地を与えること」を尊んで言ったもの。この「しおき」は誰にどの土地を領有させるか、だれにその管理統治をまかせるか、を決定し実行すること)。

「信長卿江北仕置事」(『浅井三代記』:ここで信長は木下藤吉郎秀吉その他に江北(近江国の北)に関し「所領ヲ被下(クダサレ)ケル」ということをおこなっている。つまり、この「仕置」も封建)。

「備前守長政は信長卿より御入洛の日限兼て示合せし事なれば、留主中国中の仕置(しおき)申付(申しつけ)、永禄十一年九月六日に佐和山の城にいたり、信長卿を相待處に…」(『浅井三代記』:この「仕置」は国内の統治・管理としてなすべきことを意味する。この、国内の統治・管理は治安維持、警察取り締まり、処罰、といったことも意味するようになる)。

「主殺しとも云ひつべし。きつと仕置に行ふべきが………慈悲を以て助けをく…」(「浄瑠璃」『五十年忌歌念仏』:「きつと仕置」は、事実上、死刑)。

 

◎「しか(鹿)」

「し」は動詞「し(為)」。「か」は蹄(ひづめ)の音による擬音。「しか(為「か」)」は、「か」をするもの、「か」という蹄(ひづめ)音のするもの、の意。動物の一種の名。単に「か」とも言い、「かのしし」などとも言う。「かのしし」は、(上記の意味での)「か」の獣(しし)、の意。

「餝磨(シカマ)郡 ………大三間津日子命(おほみまつひこのみこと) 於此處 造屋形而座時、有大鹿而鳴之尓時、王勅云『牡鹿鳴哉』故号餝磨郡」(『播磨国風土記』)。

「大和へに君が発(た)つ日の近づけば野に立つ鹿も響(とよ)みてぞ鳴く」(万570)。

「鹿 …和名加」(『和名類聚鈔』:「しか」ではなく、単に「か(加)」と書かれている)。「鹿 …和名カ」(『類聚名義抄』:これも「しか」ではなく、単に「カ」と書かれている)。「鹿 シカ」(『色葉字類抄』)。