◎「さをとめ(早乙女)」
「さあををとめ(さ青乙女)」。「さあを(さ青)」はその項参照(5月14日)。初夏の爽やかな青空のもとの娘(をとめ)のイメージを表現したもの。なぜ青空なのかというと、娘は田植えをしているからである。早苗植えわたし夏は来ぬ、の季節に…。「さをとめ」という言葉は、田植えする娘、という印象が非常に強い用いられ方をする(田植え以外のことをしている場合にも用いられる)。田植えの時期には若い娘も手伝い、普段は見られないその姿が(とりわけ男に)印象的だったのでしょう(その意味で、この語には「さをとめ(さ男と女)」。「さ」は動態を促し、誘い、「を」は男であり、「と」は思念的になにかを確認し、「め」は女、すなわち、「さ男(を)」とある女(め)、男を誘う状態になっている女、という意も含意されているように思われる)。
「種まきし早苗の稲や生ひぬらむしづ心なく見ゆるさをとめ」(『六条修理太夫集』)。
「早乙女はおやまじゃさかひ美しひ」(「雑俳」『柳多留』:「おやま」は遊女)。
◎「さんま(秋刀魚)」
「さみむら(細身群)」。語尾のR音は退行化している。「さ」は「さし(狭し)」などにあるそれであり、狭(せま)さ、ここでは細(ほそ)さ、を表現する。全体の意味は、身の細いものが群れをなしているもの、ということなのですが、これは魚名ですが、「おきさより(沖細魚)」などとも言われ。細魚(さより)の方が重視される魚だったようです(サヨリの方がとりやすい海域にいたというただそれだけのことか。サヨリとサンマは下顎以外よく似ている(※))。
「細魚 訓佐與利……「釋名」……「集解」……………沖細魚(ヲキサヨリ)ハ……形略(ホホ)相同ソ……曰(い)フ三摩ト 義未詳…」(『本朝食鑑』(1697年):「三摩」は「さんま」)。
※ 魚名「さより(細魚)」は「さやより(狭矢寄り)」か。「より(寄り)」は群れをなしている、の意であり、細い矢が群れているようなもの、の意。