◎「ころ」

回転を表現する「くる」の母音変化→「くるくる」(2021年12月1日)の項。O音の目標感・客観的な存在感により「くる」が客観的なそれとして表現される(「ろ」に関しては「うろうろ」の項)。何かが回転する。「くるくる」と回るだけではない。独立した存在となり他との接触を生じているそれは引力や他の何かとの摩擦により移動が生じる。これを二度反復することにより連続感・永続感が表現され「ころころ」になる。「ころび(転び)」「ころげ(転げ)」「ころがり(転がり)」「ころり」(擬態表現)などはすべてこれによる表現。

◎「ころげ(転げ)」(動詞)

「ころくえ(ころ崩え)」。「ころ」は独立した存在物の回転運動を表現する擬態(→「ころ」の項)。「くえ(崩え)」は崩(くづ)れることですが(→「くえ(崩え)」の項)、「ころくえ(ころ崩え)→ころげ」は、回転運動するように崩れていく動態を表現する。これは(たいてい馬から)「ころげ落ちる」という表現から生じている動詞でしょう。意味は、事実上、「ころがり(転がり)」に似ている。

◎「ころがり(転がり)」(動詞)

「ころかはり(ころ変(返)はり)」。「ころ」は独立した存在物の回転運動を表現する擬態(→「ころ」の項)。「かはり(変(返)はり)」は、ここでは、裏と表が次々と交互に交替する連続運動を表現する。独立した存在物の回転運動によってその裏と表が次々と交互に交替する印象の連続運動が起こっていることが「ころがり(転がり)」。これは、その動態にあることも、その動態による状態であることも、表現する。すなわち、「床にころがる玉」は、回転運動移動している玉も、そうされ床に停止している玉も、表現する。他動表現は「ころがし(転がし)」。

 

◎「ころ」

この「こ」は凝固、充実、を表現する「こ(凝)」。「ろ」に関しては「うろうろ」の項。何かが充実した印象にあることを表現する。「ころころ太って」(これは転がるように太っているわけではない。充実感が感じられる状態で太っている)。この「ころころ」は、「くる」(回転)の子音変化たる「ころ」によるものではない。「ころがき(ころ柿)」(干し柿の一種)の「ころ」もこれでしょう(これは蓆(むしろ)の上でコロコロと転がすからだと言われる)。

 

◎「ころく」

「ころく(頃来)」。時期が来た、の意。烏(からす)の鳴き声にかけて『万葉集』(3521)の歌で言われている表現。

「烏(からす)とふ大をそ鳥のまさでにも来まさぬ君をころくとぞ鳴く」(万3521:「まさでにも」は、固く、真実、そうなると思っていたがそうならず、のような意(「まさで」の項))。