◎「こり(凝り)」(動詞)

「こをり(凝居り)」。「こ」はK音の交感とO音の目標感・遊離感により客観的な凝固感・凝縮感、質的な濃密感・濃縮感が生じる。交感に存在感が生じる。「をり」はそうした存在情況の進行にあることを表現する。「こをり(凝居り)→こり」は客観的な凝固感・凝縮感、質的な濃密感・濃縮感のある存在情況の進行にある。複数対象にそれが生じればその複数の対象が一点の交感へ凝縮凝固していくような語感が生じ「其の矛(ほこ)の鋒(さき)より滴瀝(しただ)る潮(しほ)凝(こ)こりて一つの嶋になれり」(『日本書紀』)、「凝然 …堅也 コル サタマル」(『(図書寮本)類聚名義抄』)。ある対象にそれが生じればそれは凝縮・凝固し「川の氷(ひ)こり」(万79:これは氷が凝固した)、「凍 ……コホリ コル …ココヒタリ」(『類聚名義抄』)。人間内的にそれが生じれば知的・心情的・嗜好的にそうなる「趣味にこる」。「肩がこる」もこれ(これは肉体的・生理情況的にそうなる)。

 

◎「こり(懲り)」(動詞)

「こおり(伐降り)」。「こ(伐)」は斧で木を伐(こ)る(斧で立木を叩き切る)際の擬音。「こおり(伐降り)→こり」は、その斧の一撃が降りたような状態になること。何かをし、それによる苦痛体験を受け、その何かをすることに対する誘引が喪失または減少すること。この動詞は上二段活用。

「わが屋戸(やど)に韓藍(からあゐ)蒔(ま)きし枯れぬれど懲りずてまたも蒔かむとぞ思ふ」(万384)。

 

◎「こり(伐り)」(動詞)

「こ」は斧で立木を叩き切る際の擬音。「こり(伐り)」はその動詞化。その「こ」の努力をする情況になること。その「こ」の動態で立木やその枝を斧やそれ状のもので切断する努力をすること。

「斧取りて丹生(にふ)の檜山(ひやま)の木(き)折(こ)り来て…」(万3232)。