◎「こり(香)」
「かをり(香り)」。後の表現で言えば、いわゆる「おカウ(御香)」。
「時(とき)に、蘇我大臣(そがのおほおみ)、手(て)に香鑪(かうろ)を執(と)りて、香(こり)を燒(た)きて願(ちかひ)を發(おこ)す」(『日本書紀』)。
◎「こり(垢離)」
「こり(懲り)」。動詞「こり(懲り)」は苦痛体験を受け、その何かをすることに対する誘引が喪失または減少することを意味しますが、「こり(垢離)」は、自己に、仏教的な意味での業(ゴフ:その悪業・罪業)、それにとらわれた自己に、苦痛を与え「こり(懲り)」を生じさせ、反省をしめすこと。この作法は密教系の仏教や修験道からはじまっている。具体的には、川の水や海水といった冷水を身に浴び、清浄感を生じさせる。これを行うことは「垢離をとる」や「垢離をかく」「垢離にかく」と表現する。どれも「こり」という自己作用を生じさせることを意味している。「水ごり」。
「垢離」は当て字。「垢離(コウリ):(世俗の)垢(あか)が離れる」と書くといかにも漢語のような印象を受けますが、日本の「こり」を意味するような「垢離」という漢語はない。また、これは仏教系の「業(ゴフ)」の戒めであり、イザナキノミコトが黄泉の国から帰っておこなったような、穢(けが)れをすすぐ「みそぎ」とは異なる。
◎「こりずまに」
「こりずもやに(懲りずもやに)」。「こりずもや(懲りずもや)」は、懲りずもか?懲りもせずにか?の意。「こりずもやに(懲りずもやに)→こりずまに」は、懲りもせずに、ということ。
「なほ こりずまに、またもあだ名立ちぬべき」(『源氏物語』)。
◎「ごりおし」
「ゴフリおし(業理押し)」。業(ゴフ)にとらわれた理(リ)を事態に押し通し事態をその理で動かそうとすること。