◎「こぶら(腓)」

「こみゆら(小身揺ら)」。「ゆら(揺ら)」は何かに自体を維持しつつ揺れる情況にあるもの、の意。身の小部分が揺れついている印象の身体部分。下肢の後ろ側です。「ふくらはぎ」とも言う。また、「こむら」とも言い、それが痙攣を起こすと「こむらがへり(腓返り)」。

「腓 …コフラ ハキ…」(『類聚名義抄』)。

 

◎「こぶし(拳・小節)」

「こぶし(凝節)」。「こ(凝)」は凝固感を表現する。「ふし(節)」は特に印象的に感づかれる何かを表現する。「こ(凝)」の印象が特に印象的に感づかれることやものが「こぶし」。とりわけ、堅く握られた状態の人間の手を言いますが、歌の発声で特起的に印象に残る部分を言うこともある。この、歌の意味での「こぶし」は「小節」と書かれることが多い。

「拳 …和名古不之 屈手也」(『和名類聚鈔』)。

 

◎「こふのとり(鸛)」・「こほろぎ(蟋蟀)」

この二語、「こふのとり(鸛)」は「くぐひ(白鳥)」の項(2021年9月20日)で、「こほろぎ(蟋蟀)」は「きりぎりす(蟋蟀)」の項(2021年9月11日)で、それぞれ触れたのですが、五十音順でこのあたりということで再記。

・「こふのとり(鸛)」

「「こ」おふねおふとり(「こ」追ふ音追ふ鳥)」。「「こ」おふね(「こ」追ふ音)」とは、「こ」(これは擬音)と追うように連打する音(ね)。それを追ふ鳥、とは、「こ」の連打を追うように連打する鳥、の意。これは鳥の一種の名ですが、この鳥は「ここここ」と嘴(くちばし)を打ち鳴らし連打し独特の音を発することが特徴的です。その特徴による名。形態は鶴(つる)に似ている。

「鸛 オホトリ ………オホトリとは大鳥也。即今俗にコフヅルともコフノトリともいふなり」(『東雅』(1717年成立))。

「鸛 本草云鸛……和名於保止利 水鳥似鵠而巣樹者也」(『和名類聚鈔』:『和名類聚鈔』で「鵠」は「くぐひ」すなわち、ハクチョウを言っていますが(中国語でもそれを意味する)コウノトリと白鳥はあまり似ていない。むしろ鶴に似ている)。

・「こほろぎ(蟀)」

「こふをおろきき(乞ふを疎聞き)」。乞い(求め)、近づくと遠ざかり微かに聞こえるような状態になるもの。接近すると敏感に鳴き止み離れた所にいる虫の音が残るのです。昆虫の一種の名。羽を擦過させ音響を発する種類の虫ですが、古代では生物学的特定性はなかったでしょう。

「夕月夜心もしのに白露の置くこの庭にこほろぎ(蟋蟀)鳴くも」(万1552)。

「蜻蛚 ……和名古保呂木」(『和名類聚鈔』)。『廣韻』の「蛚」の説明に「蜻蛚蟋蟀」とあり、中国の書に「陸璣云:蟋蟀,似蝗而小,正黑,有光澤如漆,有角翅。一名蛬,一名蜻蛚」とあり、「蜻蛚」と「蟋蟀」はどうも同じらしい。「きりぎりす(蟋蟀)」も参照。