◎「こなた(水田)」

「こにはた(濃庭田)」。「こ(濃)」は形容詞「こし(濃し)」(2月27日)の語幹になっているそれであり、自己に到来する(出現し接近する)感覚の量感が増大し充満化していく印象であることを表現し、それは自然界の作用力、この場合は農産物育成の作用力、も表現し、土壌が肥沃であること、いわゆる地味が豊かであること、を意味する。「には(庭)」は特別な地域を意味し、「こにはた(濃庭田)→こなた」は、産物を豊かに生み出す庭(には:特別地域)たる、地味豊かな、田(た)、という意味になる。

「其(そ)の水田(こなた:次々と産物を生む質の豊穣な田)は曾孫(ひひこ)にいたせ」(『日本書紀』持統天皇四年十月:曾孫まで受け継がせいたらせろ)。

 

◎「こね(捏ね)」(動詞)

「コンにあへ(混に和へ)」。「混(コン)」は『説文』に「豐流也 一曰雜流 或作渾 又混沌 元氣未分也」とされるような字。「コンにあへ(混に和へ)→こね」は、混(ま)ぜるように一体化すること。混ぜるのは粉状のものと水、そして粉状のものと粉状のもの。応用として「理屈をこね」といった表現などもする。

「粉を水に和するを こぬ といへり」(『名語記』(1268-75年):終止形「こぬ」と言っている。下二段活用)。

「Cone. uru. eta. …… Vt, Tçuchiuo conuru(つちをこぬる). Amasar barro」(『日葡辞書』(1603-4年):終止形「こぬる」と言っている。()内の日本語は原文にない。Amassar barro(泥をこねる:原文はロングエスが一つ入る))。

「客人を遣(つか)ふ合点でそばこねる」(「雑俳」『うしろ紐』(1737年):終止形「こねる」と言っている。下一段活用)。

※ 終止形「捏ぬ→捏ねる」「跳ぬ→跳ねる」「告ぐ→告げる」「失す→失せる」といった下二段活用型から上一段活用型への歴史的変化は動態の表現が情況動態化し客観的になっているということ。前者が「文語文法」、後者が「口語文法」と言われるわけですが、言われなくなった言い方は文字の記録で読むので「文語」と言われるということです。

・「こねくり(捏ねくり)」(動詞)

「こね(捏ね)」を繰り返すこと。「くり(繰り)」は2021年11月29日ですが、要点だけ再記すれば。「回転を表現する擬態「くるくる」の「くる」によるその情況動態表現「くるり」の動詞化。回転を思わせる動態を行うこと。これは同じ動態が何度も反復することも表現する。また、「糸繰(く)り」の影響により、手前へ、自分の方へ、引き寄せる動態印象も強い。………」。