◎「け(日)」

「かへ(日経)」。「か(日)」は「ふつか(二日)」「みっか(三日)」などの「か」(→「か(日)」の項・1月4日)。「かへ(日経)」はその「か」が幾つも経ること。つまり何日もたつこと。「君が行きけながくなりぬ」(『古事記』歌謡88)と言ったりする。

「長きけをかくのみ待たば…」(万484)。

「朝(あさ)にけに(朝爾食爾)常に見れども」(万377)の「け」は「くれ(暮れ)」(朝に暮れに―一日中)。

 

◎「け(木)」

「きはえ(木生え)」。「こはえ(木生え)」の可能性もある。「かえ」のような音を経つつ「け」になった。「きはえ(木生え)→け」は、林(はやし)、さらには、そこに生えている木。

「松のけ(気)の並みたる見れば…」(万4375)。

「真木柱(まけばしら:麻気波之良)」(万4342)。

「是(これ:殘(あ)しき賊者(やつこ))御木(みけ) 木此云開 の川上(かはかみ)に居(あ)り」(『日本書紀』:「木此云開」(「木」は此れを「開」と云う。「開」は「ケ」)。「みけ(御木)」は地名))

 

◎「け(褻)」

「くへ(来経)」。来(く)ることが経過すること。そこでは来(き)たことは来(く)ることであり、来(こ)ないことは来(こ)ず、来(く)ることだけが来(く)る。すなわち、ありきたりなことが続くことであり、日常の、平凡な、「それ」として意識されることなどないことが続くこと、続いていること。それが「くへ(来経)→け」。「け(褻)」のこと、は、日常的な、普段のこと、であり、「け」の着物は日常的な普段の着物です。この語は「はれ(晴れ)」と対で言われることが多く、「はれ(晴れ)」は非日常的な特別な状態であることであり同時に特別な開放感があることです。そうした「はれ(晴れ)」のことにおける着物は「はれぎ(晴れ着)」。

「けにも晴(はれ)にも此破れ衣で、こたへても耐(こた)へられず」(「浄瑠璃」)。

「女房ハ褻ノ時ハヒトヘウハキ紅ノウチキヌカラキヌ等着シテ裳ヲキヌ例也」(『女官飾抄(ニョウクヮンかざりセウ)』)。