◎「くるめき」(動詞)
「くる」は回転を表現する擬態。「めき」は「春めく」などにあるそれ。回転が現れ増大増強する状態にあること。盛んに回ることや人がそうなったように忙しく立ち働いたり、狼狽し動き回ったりする。「目くるめく」は回転物を視認する努力により動体視認能力が劣化したような状態になる。
「鉢こまつぶりのやうにくるめきて」(『宇治拾遺物語』)。
「『あらあつやあつや』とをめきいり、くるめくことおびたたし」(『古今著聞集』)。
「眩 ………女久流米久夜萬比(めくるめくやまひ) 懸也 目所視動亂如懸物揺揺然不定也(目が視(み)るに懸物(どこかに懸(か)けてぶら下げた物)が揺揺として不定な如く動乱する)」(『和名類聚鈔』)。
◎「くるめき」(動詞)
「くれゐめき(眩れ居めき)」。「めき」は「春めく」などにあるそれ。「くれ(眩れ)」の状態が現れそれが増大増強する状態になること。「めくるめく(目くるめく)」。
「供にある従者(ずさ)どもは、谷に落ち入りぬれば、『疑ひなく死ぬる』と思ふ。さるにても、『いかがあると見む』と思ひて、岸のもとに寄りて、わりなく爪(つま)立てて、恐しければ、わづかに見入るれど、底ひも知らぬ谷の底に、木の葉繁き下枝にあれば、さらに見ゆべきやうもなし。目くるめく心地すれば、しばしもえ見ず」(『古本説話集』)。
◎「ぐるり」
「ぐる」は「ぐるみ」のそれに同じ、周囲全体を取り囲むような、何か全体への影響感のある情況を表現する。「家の周囲を生垣でぐるりと囲(かこ)ふ」。
◎「くるわ(曲輪・郭)」
「くる」は回転感をもって全体への影響感を表現する。「わ」は輪(わ)であり、「くるわ(くる輪)」は全体を輪のように丸く(完全に)画した部分、周囲との異なった領域、を表現する。周囲とは区切られた特別域は一般的に「くるわ」になり得るのですが、江戸時代には、特に吉原などの、遊郭町を、周囲の(普通に生活する)一般的な域とは異なった特別に区切られた域として、「くるわ」と呼ぶ(後世では「くるわ」はほとんどこの意味になる)。漢字表現は「曲輪・郭・廓・曲廓」といった書き方をする。
「…そとふりきつてはしりいで、命をかるこめくるわにはせあがり西東をみてあれば…」(『さヽごおちのさうし(笹子落ちの草紙)』:「こめくるわ」は、米曲輪。米が保管されていた特別地域。いくつかの米蔵が立ち、周囲に、その域を囲うように、なんらかの施設があったかもしれない。「かる」は、借る)。
「傾城町の一かまへを郭(クルハ)といふなり」(『色道大鏡』:この「くるわ」は遊郭の意)。