◎「くぐひ(白鳥)」

「けひけゐいひ(気引け居言ひ)」。「ひけ(引け)」は「ひき(引き)」の自動表現。気が引けている居(ゐ)で、気が引けている佇(たたず)まいで、ものを言っているようなもの、の意。首が後ろへ引けているようなその姿勢の印象による名。鳥の一種の名。「ハクテウ(白鳥)」の古名。

「鵠 ……漢語抄云古布 日本紀私記云久々比 大鳥也」(『和名類聚鈔』:つまり「くくひ(久々比)」は「こふ(古布)」とも言う。これは鳴き声の擬音でしょう。「こふのとり(鸛)」の「こふ」とは関係ない)。

「鵞 …形如鴈…カリ…ククヒ」(『類聚名義抄』:「鵞(ガ)」はガチョウ(ガテウ)。これも「くぐひ」と言ったようです。たしかに首が長く形は似ている)。

「白鳥(ハクテウ)の羽にてはぎたる矢」(『太平記』(1370年ころには完成))。

「Facuchô i. Cugui. Cisne」(『日葡辞書』:Facuchô(ハクチョー) I. Cugui(クグイ). Cisne(スィーズニ:ポルトガル語で、白鳥(ハクチョウ):sの原文はロングエス))。

 

◎「こふのとり(鸛)」

「「こ」おふねおふとり(「こ」追ふ音追ふ鳥)」。「「こ」おふね(「こ」追ふ音)」とは、「こ」(これは擬音)と追うように連打する音(ね)。それを追ふ鳥、とは、「こ」の連打を追うように連打する鳥、の意。これは鳥の一種の名ですが、この鳥は「ここここ」と嘴(くちばし)を打ち鳴らし連打し独特の音を発することが特徴的です。その特徴による名。形態は鶴(つる)に似ている。

「鸛 オホトリ ………オホトリとは大鳥也。即今俗にコフヅルともコフノトリともいふなり」(『東雅』(1717年成立))。

「鸛 本草云鸛……和名於保止利 水鳥似鵠而巣樹者也」(『和名類聚鈔』:『和名類聚鈔』で「鵠(コク)」は「くぐひ」すなわち、ハクチョウを言っていますが(中国語でもそれを意味する)コウノトリと白鳥はあまり似ていない。むしろ鶴に似ている)。