◎「くえ(崩え)」(動詞)
「きえいえ(消え癒え)」。「きえ」が「け」のようになりつつ「けい」が「く」になっている。何かが、存在のあり方が喪失すること、すなわちその存在が消失すること、に安堵する状態になること。安堵するのはその「何か」です。存在のあり方が失われていく。なにかが崩壊していく。土地や岩の崩壊することやその崩壊部分も「くえ」と言う。「くえこみ(崩え込み)」という表現もあります。崩れこむ、落ちくぼむ、のような表現。「皺(しわ)がくえこむ」。
「…塞(せ)きに塞(せ)くともなほやくえなむ」(万687:(貴方への思いは)どれほどせきとめても崩れる(せき止めることはできない))。
「鎌倉の見越し(みごし:美胡之)の崎の岩崩(いはくえ:伊波久叡)の 君が悔(く)ゆべき心はもたじ」(万3365:「見越し(みごし:美胡之)」に関してはそれ以外の読みもありますが、岩崩えからかいま見る、という表現が良いように思われます)。
◎「ぐうたら」
「グウたりら(偶足りら)」。「りら」が「ら」の一音になっている。「偶(グウ)」は、たまたま、思いがけず、ということ。「グウたり(偶足り)」は、たまたまの、偶然の足り、たまたまの、偶然の足りで足りてしまうこと。たまたまの、偶然の足りしかないこと。語尾の「ら」は情況や複数を表現し、たまたまの、偶然の足りで足りてしまうことが個別的具体的なことではなく、一般的なことであることを表現する。つまり「グウたりら(偶足りら)→ぐうたら」は、思考や感情の働きであれ、肉体的行動であれ、主体的積極的働きが何もなく、ただたまたま出会った、偶然そうなつた、ことで満ち足りてしまうことが一般的であること。