◎「きよし(清し)」(形ク)
「きえほ(消え秀)→きよ」(「え」はY音)の形容詞表現。「ほ(秀)」特異的な感覚的発生感を表現します(→「ほ(秀・穂)」の項)。「きえほ(消え秀)」は、消えにより秀でる印象。消えにより現れる感覚。消えによる現れ。消えによる純粋感の表現。この「きよ」による、情況感を表現した「きよら(清ら)」やそれを確認する「きよらか(清らか)」といった表現もある。「きよ(清)」の「け(気)」が感じられる「きよげ(清げ)」という表現もあります。
「月讀(つくよみ)の光(ひかり)は清く照らせれど…」(万671)。
「玉敷ける清き(伎欲吉)渚を潮満てば…」(万3706)。
「丈夫(ますらを)の 清き(伎欲吉)その名を いにしへよ 今のをつつに(乎追通爾)… 」(万4094:「をつつ(乎追通)」は「うつつ(現)」の母音変化でしょう)。
「きよしと見ゆるもの………水を物に入るるすき影」(『枕草子』)。
◎「きよめ(清め)」(動詞)
「きよ(清)」の動詞化・他動表現。何かに対し意思動態的に「きよ(清)」に努めること。物的な汚れに関しても、つまり、掃除なども、言い、文化的習俗的不浄(穢(けが)れ)をのぞくことも言う。
「…まつろはぬ 人をも和(やは)し 掃き清め 仕へまつりて …」(万4465)。
「罪(つみ)を雪(きよ)め」。「恥をきよめ」。
自動表現もあります。「いさなとり浜辺を清(きよ)み…」(万931:「瀬を早み」のような「~を+動詞自動表現」。「いさなとり」は迷いを振り払った状態になるを表現しますが(→その項)、この場合はそれによる何らの疑念のない清らかさが表現されたのでしょう)。