「仰」の音(オン:漢音「ギャウ」呉音「ガウ」。ちなみに、現在の中華人民共和国音では、英語系アルファベットで表記すれば、yang(下記※))。「仰」は中国の書に「舉首望也」と書かれるような字。首を上げて上方たる彼方を見るわけです。ようするに、見上げる。
「ぎゃう」は、見上げるような、圧倒されるような、感銘を受けることであることを表現する。「ぎゃうに~」や「ぎゃうな~」といった言い方をします。
「ぎゃうに咲くは春雨の徳ぞ花盛り」(「俳句」)。
「ぎゃうにうつくしいなんといへば、にくからず返答す」(「浮世草子」)。
「物のおびたたしきを仰(きゃう)なといふは京ことばなり」(「男重宝記」)。
要するに、見上げるような心情を表現します、というただそれだけのことであり、この「ぎゃう」が「仰」であることは一般にも周知であり、特に語源として書くほどのことでもないのですが、こういう表現が別にありますよ、ということを知っておいた方が「ぎゃうさん(仰山)」「ぎょうぎょうし(仰々し)」の語源理解に有益と思われますので書いておきます。「ぎゃうさん」や「ぎょうぎょうし」が慣用的に「仰山」「仰々し」と書かれるのでこの「仰(ギャウ)」だと思い込む傾向が非常に強いのです。たとえば「ぎゃうさん(仰山)」は山を仰(あふ)ぐことだと思う。
※ 中国語は、数百年数千年の経過で、K音系やG音系、つまり喉音系ですね、の音がJ音系やY音系に変化します。