◎「きみ(君)」

「きめ(極め)」の自主動態的表現と言っていい表現→「きめ(極め)」の項(下記)参照。「きまり(極まり)」に意味が似ている。きまっていること・もの。決定的効果のあること・もの。これが人間や社会への決定的効果のあるもの、人を意味し、それが決定的に重要な人を表すようになった。これに増大感を表現する「おほ(大)」がつけば古代における天皇の俗称たる「おほきみ(大君)」。

「きみ(岐美)が装(よそひ)し貴(たふと)くありけり」(『古事記』歌謡8)。

「…天(あま)の日嗣(ひつぎ)と つぎてくる 君(きみ:伎美)の御代(みよ)御代(みよ)…」(万4465)。

この語は古代では姓(かばね)の一つにもなる語ですが、尊さを感じている人を婉曲的に表現する代名詞のようになりつつ(「君(きみ)が形見(かたみ)」(万47)、「吾(あ)が兄(せ)の君(きみ:岐美)」(『古事記』歌謡63))、何千年かたつうちに、この「きみ(君)」は二人称たるありきたりな軽い尊称になっていきます。「君の名は」。

 

◎「きめ(極め・決め)」(動詞)

この「き」は、K音の交感による気づき、理性の(自覚作用の)自動発動、動態(ものごと・現象)の対象化、記憶化、そしてそのI音化によりその進行が表現され、対象との交感が進行する。その「き」が自主的動態として発動すればアクセントはあがり「き(牙)」のそれや「きり(切り)」のそれになり、客観的動態として表現されれば「きき(効き・聞き)」のそれでもあり、その対象との交感が進行することが活用語尾M音により意思動態的に現れた場合、それは対象(ものごと・現象)の存在・不存在の限域へ向かいつつ対象との交感が進行する。ものごと(現象)の存在・不存在が働きかけられる。つまり、効果が、それも決定的な効果が、働きかけられる。そして「現象効果A」が「きまり(決まり)」になったとき現象効果Aが有る。

「踏みつけられて、きめられて順(したが)ふ」(『周易抄』:決定的に効果を生じさせられ)。

「技(わざ)を極(き)め」。「規則を決(き)め」。「心を決(き)め」。

動態としての存在・不存在の効果を生じさせるこの動詞は、人の心情傾向や動態傾向にそうした効果を生じさせる意思動態をあらわす、という意味で、厳しく咎(とが)める、叱(しか)る、のような意味でも言います。

「人より折檻(セツカン)しきめられ…」(『こんてむつすむん地』(キリシタン書。タイトルはラテン語の音写))。

「さるは入道殿の、有国、惟仲をば左右の御まなこと仰せられけるを、きめられたてまつりぬるにやと、いとほしげなり」(『栄花物語』)。