◎「きね(杵)」

「きね(男根)」。昔、男・女はそれぞれ「き」「み」で表すことがあった(7月17日)。その男(き)の「ね(根)」とは男性性器であり、柄の無い、手持ちの杵の形態との類似性に由来する。これで木の実その他を打ち砕く。

「杵 ……訓岐祢」(『新訳華厳経音義私記』)。

「うす(臼)」の語源に関しては2020年5月9日。

 

◎「きぬた(砧)」

「きねいた(杵板)」。「ねい」が「ぬ」になっている。「きねいた(杵板)→きぬた」は、「きね(杵)」と「いた(板)」ということであり、「きね(杵)」は何かを打つ固いものを意味し(形状は手に入りやすくその用途に好都合であればそれでよい)、「いた(板)」はその打撃を受ける平面状の固いものです。その「きねいた(杵板)→きぬた」で独特の作業が行われ、その作業を行う道具を「きぬた」と言い、その作業も「きぬた」と言う。何をしたかというと、その平面状のものに何かを乗せ広げ、固いものでこれを幾度も全体を打ち、繊維をほぐし、これを柔らかく滑らかにする。つやも出る。ほとんどは布に関し行いますが、紙や皮に関し行われても不自然ではありません。下の台にあたるものは多く石製ですが、木製もあります。そこに乗せた布などを打つものはほとんど木製です。その形状は、単なる太めの棒状のものでもよいのですが、「よこづち(横槌)」と言われる、槌頭部の側面で打つような、相当に太めの短い丸太の小口片方に握り柄をつけたような形状のものもあります。通常、「きぬた」として印象に残るのはこの形状のものである(ネットの画像にある「きぬた」もほとんどがこれですが、打撃する部分が多少湾曲した厚い板状のものもあります)。

「砧 …和名岐沼伊太 檮衣石也」(『和名類聚鈔』:「きぬいた」と言っている。この「擣衣石也」は『廣韻』などにある「砧」の説明そのままですが、「檮」は「搗」(つく)と同字として扱われています。「檮(タウ)」は切り株・断木、の意であり、これに柄がつけば槌(つち)になる)。

「白妙の衣うつ砧の音もかすかにこなたかなた聞きわたされ…」(『源氏物語』)。