◎「きっぱり」

「きっぱはらり(切刃はらり)」。「きっぱ(切刃)」は「きりは(きり刃)」であり、刀(かたな)の刃や刀(かたな)を意味する俗語→「きっぱ(切刃)」の項。「はらり」は情況全的に落ちること→「はらり」の項。情況全的に切断される。過去からも、未来においても、切断される。それは、峻別限界を鋭利に切った明瞭性も表現する。

「太夫に逢(あふ)おとこ天神買おとこきつはりと水際がたつて見ゆるもうるさし」(「浮世草子」『好色万金丹』)。

「一昨日(をとつひ)昇(のぼる)に誘引(さそはれ)た時(とき)既(すで)にキツパリ辞(ことは)ッて行(ゆ)かぬと決心したからは…」(『浮雲』二葉亭四迷)。

「きっぱりと忍び人しれる雪の朝」 (「雑俳」『後の栞』)。

 

◎「きっと」

「きと」の変化(その表現に力が加わった促音化)。「きと」の「と」は助詞ですが、「き」は「きめ(極め)」のそれにあるような、存在と不存在の限界へ向かうような「き」であり、それが気づきの瞬間性(→「かぐや姫きと影になりぬ」(『竹取物語』))、その意識の集中性ゆえの確信性(→「きっとそうなる」)を表現する。

 

◎「きなくさい」

「きりあなくさい(鑚穴臭い)」。「きらなくさい」のような音(オン)となり「ら」は脱落した。「きりあな(鑚穴)」は、「きり(鑚り)」は火鑚(ひき)りの動作であり、木と木の摩擦により火を起こす際、火鑚(ひき)り臼(うす:木の棒を揉み込み摩擦で発火させる木の板)に火鑚り杵(きね:火鑚り臼に揉み込み発火させる木の棒)を揉み込むことにより生じた穴。それは焦げています。常に焦げ臭い。「きなくさい」はその穴の匂いが感じられるということ。「こげくさい(焦げ臭い)」に意味が似ているわけですが、それは火で焼いた(焼かれた)ことによる焦げの臭さではなく、発火による焦げの臭さです。これは(火縄銃の)火縄や火薬の発火も思わせ、「きなくさい」は発火、戦いの勃発、が予感されることも表現します。

「北時雨(しぐれ)火をたく皃(かほ)のきなくさき」(「俳句」)。