K音の交感とI音の進行感により対象との身体へ付属同動となる交感を進行させる。ここで「交感」と表現されているのは理性的な客観性を帯びた自覚であり、気づきであり、このK音によるその作用が対象たるもの・こととの理性的自覚交流としてなにごとかの存在を、自己への存在化として自己への帰属を、表現し、I音によるその動態進行がその持続を表現し、それがなにかを身体へ付属同動させることを表現する→「服をき(着)」。社会的効果も言う。「罪をきせられ」、「恩きせがましい」(これらは「きせ(着せ)」の例)。この動詞は母音の変化による意味変化を避けるため常に「き」が維持される上一段活用になる。ただし、動態が情況化される場合、I音の動態保存とA音化との妥協としてE音化する。古い時代の尊敬の助動詞「し(終止形「す」)」によるこの「き(着)」の尊敬表現は「けし(着し)」。「汝(な)がけせる上着(おすひ)の裾(すそ)」(『古事記』歌謡28)。この尊敬の助動詞「し(終止形「す」)」による動詞の活用変化は、四段活用動詞なら、活用語尾はA音化し、たとえば「取り→取らし」のようになりますが、「着(き)」の場合は「着(き)→着(け)し」になる。

漢字表記は、歴史的には「着、著、衣、襲、効、披、保」といった様々な表記がある。たとえば「衣て」と書いて「きて」と読む。

 

「白栲(しろたへ)のそて(衣手)きそなふ(着備ふ)」(『古事記』歌謡97)。

古くは、笠も、「き(着)」と言った。「傘(かさ)をさし」ではなく「笠(かさ)をき」(ただし、柄(え)がついている場合は、そうとうに古い時代でも「さし」)。

「恩をきる」(恩恵を被る)。「怨みをきる」。「思ひをきる」(思いをこうむる。思われる。装ったように、そういう思いをいだいて、という意味で、思いをきる(着る)、とは言わないようです)。「難をきる」(困難を蒙る)。「迷惑をきる」。

 

・「きせ(着せ)」

動詞「き(着)」の使役型他動表現は「きせ(着せ)」になる。E音化し「け」では意味不明になる危険があるので、他へ働きかける動感のある「せ」を添えて他動表現とした (「服きせ」)。古くは鞍を馬に装着することなども「きせ」と言った。それが、人に身体へ動態を付属同動させるという意味で、蒙(かうむ)らせる、のような意味になり、歴史的には、「頭をきせる(昔の言い方では、頭をきする)」や「人をきせ」が、頭をなぐる、や、(杖などで)人を打ち、を意味したりもした。「棒もがな。濡せる人をきせて腹癒(い)ん」(「仮名草子」:人を打って腹いせしたい)。「恩をきせ」は人に「恩」という動態を付属同動させるわけですが、「恩にきせ」は「恩」をこうむらせる。