◎「かめ(瓶)」

「かみへ(醸み器)」。酒を醸(か)む(醸(かも)す)器(へ)。「かみ(醸み)」に関しては6月15日。ただし、酒のみとはかぎりません。発酵一般が考えられているかもしれない。

「瓶子 …和名加米」(『和名類聚鈔』)。

 

◎「がめ」(動詞)の語源

何かを盗み取ったり掠め取ったりすることを意味する「いがめ」(→「いがめ」の項・下記)の「い」の脱落。意味は何かを盗み取ったり掠め取ったりすること。

この語は、貪欲に自分のものにする、という意味でも用いられているように思います。福岡の郷土料理に「がめ煮(別名、筑前煮)」がありますが、これも貪欲に(欲張りにと言ってもいいですが)様々な材料を入れた煮物ということでしょう。

※「いがめ」の語源再記

「いが (毬)」の動詞化。何かを毬(いが)にするということであり、毬(いが)に栗(くり)を入れる→(懐(ふところ))に繰(く)り入(い)れる、ということ。つまり、自分のものにすること、何かを盗みとったり掠(かす)めとったりすること。「駄賃も出さずに馬にのり,上句(あげく)の果は其魚籠いがめうとする野良狐め」(「滑稽本」)。

また、他に対し猛々しい態度になる「いがみ」の他動表現の「いがめ」もある。「牛頭(ごづ)馬頭(めづ)の悪鬼が責めよかし(責められるものなら責めてみろ)。此婆がいがめてやる」(「浄瑠璃」)。

また、「ゆがめ(歪め)」の「ゆ」が「い」に交替した「いがめ(歪め)」もある。「此(この)ぼう(棒)であいつが来おったら腰骨をたたきいがめてやろう」(「合巻」(19世紀前半に流行した草双紙の一種。草双紙は江戸時代の絵入り通俗短編小説))。

 

◎「がめつい」

「がめつ」は「がめエツ(がめ悦)」。その形容詞化が「がめつい」。「がめエツ(がめ悦)」の「がめ」は何かを盗み取ったり掠め取ったりすることを意味する動詞(→上記)の連用形。「悦(エツ)」は「悦楽(エツラク)」のそれであり、よろこぶこと。この場合、「がめ」がすべてを貪欲に奪い取るように自分のものにすることを表現し、それにより「悦(エツ)」の状態になっていることが「がめエツ(がめ悦)→がめつ」。すなわち、あらゆるものを、他の人に与えることなど惜しくてならず、すべてをうばいとるように独占し悦(よろこ)びを感じること。そうした状態であることを表現する形容詞が「がめつい」。この語は1959年初演の商業演劇タイトル(『がめつい奴』)にある語であり、それにより世に知られるようになった語であり、作者の造語かとも言われますが、「がめて悦(えつ)に入る」は一般的表現としても有りうるでしょう。