◎「かむづまり(神留り)」(動詞)
「かむうづうまり(神珍埋まり)」。「うづ(珍)」は現実的な明瞭感をもって現れた神聖感のある何かを表現する(2020年6月1日)。「かむうづうまり(神珍埋まり)→かむづまり」は、神が現実感をもって満ちた状態になること。
「海原(うなはら)の辺(へ)にも沖(おき)にも神(かむ)づまり領(うしは)きいます諸(もろもろ)の大御神(おほみかみ)たち」(万894)。
「高天(たかま)の原(はら)に神留(かむづま)ります皇睦(すめむつ)神(かむ)ろきの命(みこと)神(かむ)ろみの命(みこと)もちて…」(「祝詞」・祈年祭:「かむろき」「かむろみ」は下記)。
◎「かむなぎ(巫)」
「かむになぐい(神に和ぐい)」。「かみ(神)」は「かむ」とも言う→「かむながら(惟神)」。語の発音において「かん」のように言われそれが「かむ」と書かれているということではあろうけれど、「かむ」とも言う。語尾の「い」は代名詞のようなそれ。その項参照。「なぎ(和ぎ)」はその項参照。この「なぎ(和ぎ)」は平均化・均質化を表現する「な」による動詞。「かむになぐい(神に和ぐい)→かむなぎ」は、神と均質化しているそれ、ということであり、神と人との関係を「なぎ(和ぎ)」にし、なごやかなものにする人(怒った神をなだめるというようなものではなく、神と人との関係の抵抗や障害をなくしそのスムースな、抵抗や障害、それによる歪み、のない疏通をはかり連絡をつけるような、そんな人たち)。歴史的には、事実上、通常、女が「かむなぎ」となり、男の場合は特に「をのこかむなぎ(男の子巫)」と呼ばれました。
「是(こ)の月(つき)、風(かぜ)ふき雷(いかづち)なりて雨氷(みぞれ)ふる。……國(くに)の內(うち)の巫覡(かむなき)等(ら)、……木綿(ゆふ)を懸掛(しでかけ)て、……、爭(いそ)ぎて神語(かむこと)の入微(たへ)なる說(ことば)を陳(の)ぶ…」(『日本書紀』皇極天皇二年二月)。
「…巫 …和名加牟奈岐 祝女也…覡 乎乃古加牟奈岐 男祝也」(『和名類聚鈔』)。
◎「かむなづき(神無月)」
月暦十月の称ですが、これに関しては「むつき(睦月)」の項でまとめてふれられます。月暦(旧暦)の称は全体をまとめてでないと意味がよくわからない。
◎「かむろき(神漏岐)」・「かむろみ(神漏美)」
・「かむろき(神漏岐)」
「かむゆりをき(神揺りを来)」。「を」は状態を表現する。「ゆり(揺り)」は自動表現。「き」は「き(男)」でもある。古くは男を意味する「き(男)」があった(→その項)。「かむゆりをき(神揺りを来)→かむろき」は神が揺れるように来ること。「かむろきのみこと」が、現出する神・現出するみこと、のような意味になる。「かみるき」とも言う。これは「かみいりゆき(神入り揺来)」。
・「かむろみ(神漏美)」
「かむゆりをみ(神揺りを見)」。「を」は状態を表現する。「ゆり(揺り)」は自動表現。「み」は「み(女)」でもある。古くは女を意味する「み(女)」があった(→その項)。「かむゆりをみ(神揺りを見)→かむろみ」は神を揺れるように見ること。「かむろみのみこと」が、現出する神・現出するみこと、のような意味になる。「かみるみ」とも言う。これは「かみいりゆみ(神入り揺見)」。
「高天(たかま)の原(はら)に神留(かむづま)ります皇睦(すめむつ)神(かむ)ろきの命(みこと)神(かむ)ろみの命(みこと)もちて…」(「祝詞」・祈年祭:「すめ(皇)」「むつ(睦)」はその項)。