◎「かむかぜの(枕詞)」

「かはむくはぜの(『彼は…』向く爆ぜの)」の音変化。「はぜ(爆ぜ)」はエネルギーの爆発を表現しますがが、「かはむくはぜ(『彼は…』向く爆ぜ)」とは、『彼は…』と、遥か彼方をめざしこれに向かっている爆発、ということであり、「い(射)」にかかり、「い」は直線的進行を表現し、「かむかぜの」はその「い」が語頭にある地名「いせ(伊勢)」にかかります。ようするに、伊勢が遥か彼方へ向かっていくエネルギーの爆心地であるような表現なわけですが、そんなエネルギーを古代の人々は感じたということです。この「かはむくはぜの」が「かむかぜの」と表現されるわけですが、この表現には「神風(かむかぜ)の」も二重意になっているのでしょう。そのエネルギーは風のようなものなわけです。

「かむかぜの(加牟加是能)伊勢の海の…」(『古事記』歌謡14)。

「神風(かむかぜ)の伊勢処女(をとめ)どもあひ見つるかも」(万81:伊勢をとめを見た)。

 

◎「かむかひ(神養)」

「かみゆかひ(神ゆ支ひ)」。「ゆ」は助詞であり、経験経過(起点・経過点・手段・方法など)を表現します(→「ゆ(助)」の項)。「がひ(支ひ)」は「かひ(飼ひ)」にも現れるそれであり(→「かひ(飼ひ)」の項)、何かを維持することを表現する。ここで維持されるのは人の命です。「かみゆかひ(神ゆ支ひ)→かむかひ」は、神を経験経過して、神によって、命が維持されるもの、神から(神と生命活動が相互的に維持されつつ)維持されるもの、といったような意味になる。具体的には自然産物とそれによる食べ物であり、その尊称です。

「皇神等(すめがみたち)に初穂(はつほ)は穎(かび)にも汁(しる)にも𤭖(みか)の上(へ)高知(たかし)り、𤭖(みか)の腹(はら)満(み)て双(なら)べて稱辞(たたへごと)竟(を)へまつりて、遺(のこ)りをば皇御孫(すめみま)の命(みこと)の朝御食(あさみけ)夕御食(ゆふみけ)のかむかひに…」(「祝詞」)。