「かはみあへ(『彼は…』見敢へ)」。『彼(か)は…』と何かを見、それに対応して自己を維持すること。『彼(か)は…』は『あれは…』のような意味ですが、『彼は…』見、は、『あれは…』、と、なにごとかを見、これを思い・考え、「あへ(敢へ)」は自己を維持し、その全的完成感を失わせようとする力に対しては失うまいと堪(こら)える。すなわち、「かはみあへ(『彼は…』見敢へ)→かまへ」は、彼(か)は、となにごとかを見、これを思い・考え、自己を(抵抗を排除し。堪(こら)えるように)維持すること。
「遂に天恩を荷(にな)ひて神を留(とど)め序(ついで)を構(かま)ふること」(『大唐三蔵玄奘法師表啓』:ことの順序・成り行きをしっかりと心掛ける)。
「盤(いは)かまへ作れる塚を…」(万1801:盤(いは)を、こうあるべき、こうありたい、という思いを見、それを維持し心を込めて作られている塚)。
「主とおぼしき人はいとゆかしけれど見ゆべくもかまへず」(『源氏物語』:一目でも目にしたいが、見ることなどできそうもない)。
「此比(このころ)、京都内野辺に御かまへの堀をほらせらる」(『石山本願寺日記』:なにかに対する対策を心掛けた施設を作った)。
「城をかまへ」「店をかまへ」(政治・軍事的対策や生活対策として城や店としてのあるべき姿を思いそれを維持すべく城や店をつくり維持し)。
「媚(こび)を天子に請(まを)して禍(わざはひ)を隣の国に投(いた)して斯(こ)の意行(こころ)を構(かまふ)」(『日本書紀』斉明六年七月:新羅のある王が中国の皇帝に媚び近づき百済をおとしいれこれに悪意を生じさせるべく悪口を言い百済を撃つ援軍になってもらおうとしていた、という話です)。「虚言を心中にかまへて」(聞いた人にこう思わせてやろうと心がけ工夫して)。「讒(ザン:人をおとしいれること)をかまへ」(それを心掛け工夫している)。「帝(みかど)を傾け奉らむとかまふる罪」。
「迯(に)ぐべき構(かま)へをし給へ」(『打聞集』:逃げることを心掛け工夫しろ、のような意)。
「(剣道の)正眼のかまへ」。「心がまへ」。
・動態を形容する「かまへて~」という表現があり、「かまへ」という動態で、ということですが、なにごとかを強く心掛けて、という意味や、夢や理想のようになにごとかを見、その現実化のために抵抗をおしきって敢(あ)えて、というような意味になります。
「をのれ、かまへてかの御ことをとどめ侍(はべ)らむ」(『大鏡』:心がけて必ず、のような意)。
「『年来、此(か)く踈(う)き事共を見居たれども、我れ力及ばず。但し、其(そこ)をば構(かまへ)て助け聞えむと思ふ』」(『今昔物語』:私の力の及ばないことだ。でも、なんとかお助けする努力をしようと思う)。
「かまへてかまへてあるまじき事にて候」(『毎月抄』:(歌の頭(かしら)に題をいただきて出すことは)けしてけしてなすべきではないこと)。