◎「かため(固め)」(動)
「かた」の動詞化ですが、「かた」が「形・型・方」の場合と「固」の場合の二種があります。「かため」は「かた(方・型・形)」「かた(固)」の意思努力をすること。意味は、あるべきあり方に意思努力すること(「かた(方・型・形)」の場合)、と、他に影響されないあり方に意思努力すること(「かた(固)」の場合)。
・「かた(方・型・形)」の場合(あるべきあり方に意思努力すること)
「たはわざ(愚かな真似)なせそ天地(あめつち)のかためし国そやまと島根は」(万4487:天地が、宇宙・自然が、あるべき姿につくった)。
「門もしどけなくついぢ(築地)のくづれもかためず」(『あさぢが露』:あるべき姿にしなかった)。
・「かた(固)」の場合(他に影響されないあり方に意思努力すること)
「嵩一を取らへて、身をかためて都に送りて勘当せしむ」(『金剛般若経集験記』:「身をかため」は、「かた(方・型・形)」の場合は、結婚し家庭をもつ、という意味になる。この例文の場合は厳重に縛った)。
「この櫛笥(くしげ)開くなゆめと…かためしことを…」(万1740:他に影響されぬよう、しっかりと言い聞かせた)。
「関関をかたむ」(堅固に警護する)。
◎「かたまり(固まり)」(動)
「かため(固め)」の自動表現。「かため(固め)」の状態になること。
◎「かたみに」
「かたみに(片廻に)」。「かた(片)」は、たとえば、二で完成する何かの一であり(→「かた(片)」の項)、「み(廻)」という動詞は、周回、円循環も表現する(→「み(廻)」の項)。「かた(片)」で、「かた(片)」でありながら、周回する、円循環する、とはどういうことかというと、動態が、全体で完成感のある対位的関係にある二の一方へ、そして他方へ、そしたまた一方へと進行することであること。片方ずつ巡り全体が円満に廻(めぐ)る。すなわち、交互に、互いに、各々、ということです。
「世の中の憂きもつらきもをかしきも、かたみに言ひ語らふ(語り合ふ)人」(『更級日記』)。
「ありがたきもの ………おなじところに住む人の、かたみに恥かはし、いささかのひまなく用意したりと思ふが、つひに見えぬこそ難けれ」(『枕草子』:「おなじところに住む人」は、隣近所、という意味ではなく、御所施設の共同的な施設で生活している人、ということでしょう。その人たちが恥を相互交流させ、十分に慎み心用意して生活しながら、究極的に、本音たる心底が見えてしまわないということはなかなかない)。
「契りきな かたみに袖をしぼりつつ 末の松山 波こさじとは」(『後拾遺和歌集』)。
「近江ことばにたかひにといふ事を互(カタミ)にといへり」(『男重宝記』(江戸時代初期の一般教養や諸芸について書かれたもの。『女重宝記』もある))。