◎「かくまひ(匿ひ)」・「かくまへ(匿へ)」(動詞)の語源

「かきうめいみはひ (かき埋め忌み這ひ)」。「かくむはひ」のような音を経つつ「かくまひ」になった。「かき」は、かき曇り、のそれのように、動態が情況全的であることを表現するそれ(1月27日)。「うめ (埋め)」は、会場を埋め尽くし、のような用法ではなく、宝を土に埋め、のような用法のもの。「かきうめ(かき埋め)」は、かき消す、の影響を受けつつ、情況全的に何かを埋めて見えなくする状態にすること。何かをそうし、それが触れてはならない忌むべき何かであるような状態になることが「かきうめいみはひ (かき埋め忌み這ひ)→かくまひ」。意味は、何かを人に知られず保存される状態にすること。これは「かくまへ」とも言う。「かくまへ」は「かきうめいみはへ (かき埋め忌み延へ)」。つまり「はひ(這ひ)」が他動表現の「はへ(延へ)」になっている。また、人に知られず貯えた貯えものを「かくまひ」「かくまへ」と言ったりもする。

「一両年は熱田の大宮司にかくまはれむなしく月日をおくりし所へ」(「浄瑠璃)。

「宮をかくまへ奉り、夜中に門をひらかん事不覚の至り」(「浄瑠璃)。

「以前は相撲取もして居った事なれば、相応に貯蓄(カクマヒ)も有って」(歌舞伎)。

 

◎「かくのこのみ」の語源

「かこひのこのみ(香恋ひの木の実)」。香りのよい木の実、の意。橘(たちばな)の実。柑橘系の木の実は広くそう言ったのかも知れない。単に「かくのみ」とも言う。

「又(また)天皇(すめらみこと)、三宅連等(みやけのむらじら)の祖(おや)・名(な)は多遲摩毛理(たぢまもり)を常世(とこよ)の國(くに)に遣(つか)はして、登岐士玖能迦玖能(ときじくのかくの)木(こ)の實(み)を求(もと)めしめたまひき。自登下八字以音(“登”より下八字、音(オン)を以って)。………其(そ)の登岐士玖能迦玖能木實(ときじくのかくのこのみ)は、是(こ)れ今(いま)の橘(たちばな)なり」(『古事記』:「ときじく」はその項)。