◎「かきは(片葉)」
「かきは(欠き葉)」。葉であることを欠いている葉、葉であることの構成要素を喪失している葉、葉でなくなっている葉、ということですが、葉であることは期待的に推想されるがもはや葉ではなくなっているものであり、葉の欠けた一部たる葉、葉の断片、とでもいうものです。
「荒振(アラブル)神等(カミタチ)又石根(イハネ)木立(コダチ)草乃(クサノ)片葉(カキハ)モ辭語(コトトヒテ)」(『常陸国風土記』)。
◎「かきべ(部曲・民部)」
「かき」は「こわき(子側)」。子の横にある者、子に準じる者、子のような者、の意。古代(大化改新前)豪族に服属していた者たち。単に「かき」とも言いますが、たとえば「とりかひべ(鳥養部)」などのように、個別的な用務を負っていることを表現するわけではなく、一般的に服属関係にある者であることを一般的な家への用務者として表現し「かきべ(かき部)」とも言います。ここでは、「べ(部)」は、ある特性をもった者たち、のような意で言われている。「家部」「宅部」とも書く。「べ(部)」に関してはその項。
この「かき(民・部曲)」「かきべ(部曲・民部)」は、大化改新以前の豪族の私有民、その後、公民となる、といった説明がなされるわけですが、いうまでもなく、近代的な私的所有概念や国家概念でものごとを考えるのは誤りです。
「山守部(やまもりべ)を以(も)て民(かき)と爲(す)」(『日本書紀』顯宗天皇紀)。
「是(ここ)に、土師連(はじのむらじ)の祖(おや)吾笥(あけ:人名)………の私(わたくし)の民部(かきべ)を進(たてまつ)る」(『日本書紀』雄略天皇紀)。