「オンぼろ(恩ぼろ)」。つまり「おん」は「恩」の音(オン)。これは文字遊戯のような表現であり、「恩」は「因心」ということ。「ぼろ(襤褸)」は繊維が廃(すた)れ滅んだりしている布や衣服を意味する。「恩ぼろ→因心ぼろ(襤褸)」とは、ものが、それが存在しているその因(原因)の心(中枢的核心)が「ぼろ」(廃れ滅んだだめなもの)だ、ということ(恩のあるぼろ、という意味ももしかしたらあったのかもしれない)。当初は衣類に関し言われたのかもしれない。

「おンぼろ… 弊(や)ぶれたる衣類、卑しき値打なきものに、故(ことさ)ら敬語を用ゐて戯むる。「――を着てゐる」」(『東京語辞典』(大正6(1917)年):この辞典の著者は語頭の「おん」は「御」だと思っていたようです)。

「田舎のバスはおんぼろ車 タイヤはつぎだらけ 窓はしまらない」(歌謡曲『田舎のバス』歌詞)。

 

※ 母音は今日で終わりになります。A音の全的な完成感、開放感、相対性を喪失した空虚感・虚無感、I音の進行感、U音の遊離した動態感、E音の外渉感、O音の遊離感のある目標感、それゆえの存在感、といったことを言い、日本語のあらゆる語でそれが検証されているわけですが、子音に関してもK音の交感だのM音の意思感だのと言われつつそれが母音と融合しその語の意味が生じていくことになります。