「おり(降り)」(動詞)の語源

 

「おへふり(「お」へ振り)」。「へふ」が(E音U音の連音が)「ほ」のような音(オン)になりつつ、「おほり」のような音(オン)になりつつ「ほ」は退行化し「おり」になった。「お」の遊離感のある独立した存在感に関しては「おき(置き・措き)」の項(下記※)。アクセントがあがり想念化している。「へ」は助詞。この場合の「ふり(振り)」は、感覚的な遊離した動態感のある情況になることですが、「彼女にふられた」などと言う場合の「ふり」に同じ(→「ふり(振り)」の項)。「「お」へふり→おり」は、遊離感のある目標感をもって遊離した動態感のある情況になること、であり、何かから離脱する情況になることです。すなわち、「おへふり(「お」へ振り)→おり(降り)」において表現されていることの基本は離脱であり、その意味では「おち(落ち)」にも似ていますが、「おり(降り)」の場合は「ふり(振り)」という主動的動態が表現されることにより意思的であり、意思による動態である情況に入ります。これが高所から低所への移動を意味することが多いのは日常経験として自由落下が離脱に支援的だからです。「電車をおり」。「三階まで行ってそこでエレベーターをおり」。「役をおり」は高所から低所への移動は意味しない。霜や霧が「おり」は、何かから遊離・離脱することがそれからの独立→自己存在化、になっている。

この動詞は上二段活用です。他動表現は、「おち(落ち)」「おひ(生ひ)」「すぎ(過ぎ)」などと同じように、活用語尾がA音化した「おらし(降らし)」にはならず、O音化した「おろし(降ろし)」になります(この問題に関しては「おとし(落とし)」の項)。

 

※ 「おき(置き・措き)」(動)の項の一部を再記します。

「お」の音(オン)(あらゆる子音を問わずO音)は遊離感のある目標感、そこへ向かって行く方向感のある対象感を表現し、この遊離感のある目標感は、遊離した、離脱した、存在感にもなる(動態的独律感が生じ、これが存在感になる)。それらは、物だけではなく、事象や動態でも表現される。「コップを机におく」はコップを机に遊離した(独律的)存在感を生じさせる。この遊離感のある対象感は離脱感にもなる。「彼をおいてほかにはない」は「彼」を遊離、離脱させる(この意味の「おき」は「措き」とも書かれる)。…