「おみみゆかし(臣身ゆかし)」。(自分の)臣(おみ)としての身が(身に)、心が惹かれる(感銘を受ける)、の意。臣として光栄、のような意。「おむがしさ」「おむがしみ」という表現もあります。

「いさをしくただしき道のおむがしさとてぞわが名も君は賜ひし」(『日本紀竟宴和歌』)。

「甚に愧(かたしけなし 又オムカシ)。公食を賜へり」(『金剛般若経集験記』平安初期点)。語音の似た語に「うむがし」がありますが(7月14日(下記※))、意味が異なります。

「『………若(も)し能(よ)く臣等(おのら)に教(をし)へて道路(みち)を通(かよ)はしめば、我(わ)が王(こきし(後記))必(かなら)ず深(ふか)く君王(きみ)を徳(おむかしみ)せむ』」(『日本書紀』神功摂政四十六年三月:「こきし」は、古代の朝鮮語(韓国語)で君主的な立場の者をそう呼んでいたらしい。「こにきし」とも言う。半島の「卓淳(とくじゅん)」というところへ使いを送ったところ、その地の「こきし」が、百済の王(こきし)の使者がやって来て、日本へ派遣された、行く路を教えてくれ、と言って上記のようなことを言ったといいます)。

 

※「うむがし」(形容詞シク活用):再記

「うもみゆかし(鵜も見ゆかし)」。鵜(う)でも見るかのようにゆかしい、ということですが、(鵜飼で)自分が食べるわけでもない魚を一心に取り人のためになっている鵜でも見るかのように(その健気さや専心性に)心が惹かれる(感銘を受ける)、の意。この語が動詞化した「うむがしみ」もあります。意味は「うむがしく」思うこと。

「其の人のうむがしきこと欵(いそ)しきことを送(つひ)に不得忘(えわすれじ)」(『続日本紀』宣命:「欵」は「款」の俗字)。

「明(あか)く浄(きよ)き心(こころ)をもちて御世(みよ)累(かさ)ねて……朝廷(みかど)助(たす)け仕(つか)へ奉(まつ)りたぶ事(こと)をうむがしみ(宇牟我自弥)辱(かたじけな)み念(おもほし)めして…」(『続日本紀』宣命)。

慣用的に「う」が無音化して「むがし」とも言います。

「白玉の五百(いほ)つ集(つど)ひを手に結び遣(おこ)せむ海人(あま)はむがしく(牟賀思久)もあるか」(万4105:「おこせ(遣せ)」は、持ってきてとどける、のような意(「東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花」の「おこせ」です(これは「起こせ」ではありません)))。

語音の似た語に「おむがし」がありますが、意味が異なります。