「おひ(生ひ)」の他動表現。生ふ状態にする(育てる、のばす、等)こと。「おひ(生ひ)」の語尾がなぜO音化するのかに関しては「おとし(落とし)」の項(10月21日:「おひ(生ひ)」は上二段活用動詞です)。これは他動表現でもあり尊敬表現にもなります。なぜ尊敬表現になるかは「し(助動・尊敬)」に同じ(下記※:古くは、尊敬を表現する助動詞の「し」がありました。活用は四段活用動詞のS音活用語尾と同じです)。
※ (たとえば「取り→取らし」などのように)「動詞語尾をA音化・情況化し、その情況化した動態にS音で動感を生じさせることにより、情況が動いたという間接表現になり、その表現の間接性が遠慮表現・尊敬表現となる」ということです。上二段活用動詞の場合はO音化し情況化します。
「撫子(なでしこ:奈泥之故)を屋戸(やど)に撒(ま)き生(お)ほし(於保之)」(万4113:撫子を育てた)。
「この春よりおほす御ぐし尼のほどにてゆらゆらとめでたく」(『源氏物語』:髪をのばした)。
「相撲の節に、久米といふ相撲爪を長くおほして敵をかきけるに」(『古今著聞集』:爪をのばした)。
「この宮たちを…瑕(きず)不具(かたは)なくおほしたてまつり」(『宇津保物語』:人を育てた)。