◎「おひ(覆ひ)」(動詞)
全体感を表現する「あ」が目標感(対象感)をもってO音化した「お」による動詞。対象に対し全体的に作用しその全体への作用により目標感(対象感)が生じる。全的に作用することにより目標感(対象感)が生じるのは、何かを全的に把握することはその何かを他から分離し限定することだからです。O音の遊離感のある目標感に関しては「おき(置き・措き)」(9月2日)の項。
「槻(つき)が枝(え)は 上枝(ほつえ)は天(あめ)をおへり 中つ枝(え)は東(あづま)をおへり…」(『古事記』歌謡100)。
「時(とき)に、高皇産靈尊(たかみむすひのみこと)、眞床追衾(まとこおふふすま)を以(も)て皇孫(すめみま)天津彥彥火瓊瓊杵尊(あまつひこひこほのににぎのみこと)に覆(おほひ)て…」(『日本書紀』:ここの「まとこおふふすま」の原文は「眞床追衾」なのですが、『日本書紀』他の部分では「眞床覆衾」と書かれます。その「眞床覆衾」に覆われて天孫が天下ったというのですが、『古事記』にはそうした描写はありません。「眞床(まとこ)」という語もありません。「神牀(かむとこ)」はあります。これは崇神天皇の部分にあり、ここに眠り神意を問います)。
この動詞がさらにその意味を明瞭に表現されると「おほひ(覆ひ)」になります→下記。
◎「おほひ(覆ひ)」(動詞)
「おひおひ(覆ひ覆ひ)」。二語重なることで全体感が生じ、何かに関し目標感のある情況になるその情況性が強化表現された。遊離感、目標感のある情況感が強化され、「おひ(負ひ)」との違いが明瞭になります。
「天(あめ)の下すでにおほひて(於保比底)降る雪の光を見れば貴くもあるか」(万3923)。