◎「おとうさん(お父さん)」

「ととさま」に「お(御)」がふされた語。「とと」に関しては「ちち(父)」の項(下記)。

 

◎「ちち(父)」

→「ち(父)」の項(下記)。

「奥床(おくどこ)に母は睡(ね)たり外床(とどこ)に父は寝たり」(万3312)。「俗云父 和名知ゝ」(『和名類聚鈔』)。

この語は「てて」や「とと」に変化します。古く「てぃてぃ」「てぃとぅ」「とぅとぅ」のような発音がなされていたのでしょう。「とと」は元来は幼児語らしい(下記『日葡辞書』)。

「琴の手、母にも勝り、母はてての手にも勝りて」(『宇津保物語』)。

「とと(父)よかか(母)よと朝ゆうにいふ」(「俳句」)。「Toto 〈訳〉父。子どもの用いる語」(『日葡辞書』)。

 

◎「ち(父)」

「いつゐ(厳居)」。「い」の脱落。「いつ(厳)」はその項参照。「いつゐ(厳居)→ち」は、権威の在り、ということですが、権威者、のような意味であり、尊称です。

「横臼(よくす)に醸(か)みし大御酒(おほみき) うまらに聞こしもち食(を)せ まろがち」(『古事記』歌謡49:「まろ」は、原意は、男に対する美称)。

この「ち」にさらに助詞の「つ」と動詞「ゐ(居)」の連用形が加わりさらに丁寧な表現になると「ちつゐ(「ち」つ居)→ちち(父)」になる。この「ちち」は男親の尊称にもなります。

古代においては子音が明瞭であり、現代の「チ」よりも「ティ」に近づく音(オン)だったと思います。