「おふとを(追ふと緒)」。「と」は思念的に何かを確認します(下記※(1))。「おふとを(追ふと緒)→おと」は、「おふ(追ふ)」とある「を(緒)」、「おふ(追ふ)」という情況にある「を(緒)」の意。「を(緒)」は子孫を意味し(下記※(2))、ここでは、同じ子孫の関係にある者、の意であり、同じ子孫の関係にあるとは、同腹、すなわち同じ母親から生まれているということ。その、同じ母親から生まれている者たちにおいて「おふ(追ふ)」という情況にあるとは、先に生まれた者を追っている者、すなわち、後から生まれた者を言う。男女は問いません。すなわち、男女を問わず、同腹の子の中の相対的に年下の子が「おと」。逆に、相対的に年上の子は「え(兄・姉)」といいます。「おとひめ(乙姫)」の「おと(乙)」は愛らしさの表現です(もちろん、一般的に「えひめ(姉姫)」「おとひめ(妹姫)」という表現はあります)。「おとひと→おとうと(弟)」。木火土金水と、「え(兄)」と「おと(弟)」と、十二支を組み合わせて六〇年周期を表すのは「えと(干支)→え・おと(兄・弟)」。
※(1) 例えば「ひととなり(性・為人):人と態」は、人たる態、ですね。そういう「と」です。
※(2) 以下に 「いも(妹)」の項の一部を再記します。
「を(緒)」は紐状の長いものを表現しますが、これが臍(へそ)の緒(を)も意味し、「を」が、それによる人間関係、つながり、すなわち遠い古代以来の「を」による人間のつながり、とりわけ影響のあるのは血族や親族や家族や先祖・子孫の関係、その関係にある人たち、といったことを表現します。『万葉集』(歌番4360)にある「今(いま)のを(伊麻能乎)」(今の人々たる子孫)の「を(乎)」もこれです。