「おぢ(祖父)」「をぢ(小父)」・「おば(大母・祖母)」「をば(小母)」・「ぢぢ(爺)」「ばば(婆)」の語源
◎「おぢ(祖父・老男)」
「おほみちち(大御父)」。「ちち(父)」を尊称化したもの。これが「おほぢ(祖父)」になり「おぢ」になりました。「おほぢ(祖父)」という言葉もあります。父や母の父親を言う。転じて年老いた男も言います。「おぢいさん」は「おぢぢさま」であり、この「おぢ(祖父)」とは別語→「ぢぢ(爺)」の項(下記)。また、この言葉は「をぢ(伯父・叔父)」(下記)とは異なります。
◎「をぢ(小父・伯父・叔父)」
「をちち(小父)」。権威の小さな父。父のような存在。父母の兄弟を言います。「をば(伯母・叔母)」の夫も言います。後世「をぢさん」という場合の「をぢ」はこれです。ただし、年老いた男を意味する「をぢ」という古い語もあります(→「をぢ(老人)」の項:「老翁、此(これ)をば烏膩(をぢ)と云(い)ふ」(『日本書紀』神代下)。
◎「おば(大母:祖母・老女)」
「おほみはは(大御母)」。「はは(母)」を尊称化したもの。これが「おほば(祖母)」になり「おば」になりました。「おほば(祖母)」という言葉もあります。父や母の母親を言う。転じて年老いた女も言います。「おばあさん」は「おばばさま」であり、この「おば(大母・祖母)」とは別語→「ばば(婆)」の項(下記)。この言葉は「をば(伯母・叔母)」(下記)とは異なります。
◎「をば(小母・伯母・叔母)」
「をはは(小母)」。小さな母。権威的に小さな母。関係が遠い母です。父母の姉妹を言う。「をぢ(伯父・叔父)」の妻も言う。後世、「をばさん」と言う場合の「をば」はこれです。
◎「ぢぢ(爺)」
「おぢちち(祖父・老男父)」。「おぢ」は年老いた男を意味します→「おぢ(祖父・老男)」の項(上記)。「おぢちち(祖父・老男父)」は、祖父・老男(おぢ)たる父、ということであり、正に年をとった父と言い得る人、の意であり、「おぢ(祖父・老男)」を丁寧に言ったもの。当初は「おぢぢ」で、それが「ぢぢ」に「お(御)」が付された表現のように受け取られ「ぢぢ」や「おぢいさん」その他の表現が生まれたものでしょう。罵る場合は「ぢぢぃ(爺)」と言いますが、「ぢぢ」自体は蔑称ではありません。
◎「ばば(婆)」
「おばはは(大母(祖母・老女母))」。「おば(祖母・老女)」は祖母や老女を意味する→「おば(祖母・老女)」の項(上記)。「おばはは(祖母・老女母)」は、祖母・老女(おば)たる母、ということであり、正に年をとった母と言い得る人、の意であり、「おば(祖母・老女)」を丁寧に言ったもの。これが「おばば」になり、「おばばさま→おばあさん」や「お」がなく気軽に「ばあさん」にもなります。
◎「うば(祖母)」
「おひみはは(覆ひ御母)」。「おひ」が「う」に(OIの連音がU音に)なっています。「を(緒)」の関係で(→「いも(妹)」の項参照)族全体を覆っている印象の母、の意。父母の母、さらには年老いた女一般、を言います。「おば(大母)」「おぢ(大父)」・「をば(小母・伯母・叔母)」「をぢ(小父・伯父・叔父)」という男女の対はあるのですが、「うば」には対はありません。あるいはこの言葉の起源は古く、族関係の中心が女だった時代のもので、男は対になれなかったのかも知れません。「祖母 ウバ 父母の母也」(『文明本節用集』)。「此姫は老翁(おきな)老婆(ウバ)が儲(まうけ)たる孤子(ひとりご)也」(『太平記』)。
言うまでもなく、この語は「うば(乳母)」とは別語です。