◎「おそぶり」(動詞)の語源

「おそおびふり(鈍帯び振り)」。「おそ(遅・鈍)」はその項(10月1日)。振られているのはだいたい戸です。「おそ(鈍)」のように板戸などを振り揺すること。(事情を弁(わきま)えることのできない)馬鹿のように戸を押し揺すって人を呼び出そうとしたりします。そういう者が古代にもいたようです。

「誰そこの屋の戸おそぶる新嘗(にふなみ)にわが背を遣(や)りて斎(いは)ふこの戸を」(万3460:夫が留守で妻だけがいる状態になっているわけです)。これにその動態に情況感を生じさせる「はひ(這ひ)」が加わると「おそぶりはひ→おそぶらひ」(下記)になります。

 

◎「おそぶらひ」(動詞)の語源

「おそぶりはひ(おそぶり這ひ)」。「はひ(這ひ)」は動態が常態的な一般的なことになることを表現します(→「はひ(這ひ)」の項)。動詞「おそぶり」は上記。全体の意味は「おそぶる」ことが常態的な一般的なことになること。

「嬢子(をとめ)の寝(な)すや板戸(いたと)をおそぶらひ我が立たせれば…」(『古事記』歌謡2:ここでは大国主命が自分の状態を「おそぶらひ」と言っています。「なす(寝す)」は動詞「ね(寝)」に古代の尊敬の助動詞「し」(これは四段活用型の変化をし、終止形は「す」)がついたもの)。