◎「おすひ(襲)」
「おひせゐひ(負ひ背居日)」。背(せ)に、居る(つねにある)日を負っているようなもの、背が暖かなもの、の意。背後から覆うように体にかける、古代における衣料の一種です。
「太刀が緒もいまだ解かずておすひ(淤須比)をもいまだ解かねば…」(『古事記』歌謡2)。
◎「おしろい(白粉)」
「おししろき(圧し白着)」の「き」の音便。(とくに顔に)圧(お)すように塗り白い装いをもたせるもの。21世紀で歌舞伎役者その他に用いられている。その意味発展で、顔などに白系の装いをもたせる粉末なども「おしろい」と言ったりもする。
始めて作られたのが600年代末で、唐で行われていたことの影響と言われています。昔は鉛(なまり)を焼いてつくり(糯米(もちごめ)で作ったものもあった)、鉛毒による害が言われました(特に歌舞伎役者などが)。古くは「はふに」と言いました。これは「ハクフンに(白粉土)」(白い粉状の塗料、のような意)。水銀から作った「はらや」というものもありました。これは「ひあれらやは(日荒れら柔)」でしょうか。日荒れなどを和(やは)らげるもの。日焼け止め。装っているわけではありません、肌の日荒れをふせいでいるのです、ということ。この「はらや」は俗に、上流、と言われるような人たちに多く使われ、別名「御所おしろひ」。
「粉(ヲシロイ)を施し、たき物をうつせど、誰かは偽(いつは)れるかざりとしらざる」(『発心集』)。
「白粉俗云波布邇」(『類聚和妙鈔』)。
「毎年太夫殿から御祓箱(おはらひばこ)に鰹節一連、はらや一箱」(「浮世草子」『世間胸算用』:「御祓箱(おはらひばこ)」は、昔、伊勢の御師が毎年地方の旦那に送ったお札や暦その他が入った箱。新しいお札がくると古いお札は不要になるので、解雇などを意味する「御祓箱(おはらひばこ)になる」はそれを転用した表現)。