◎「おごそか(厳か)」

「おご」は「おごし」の語幹(「おごごし」の項・9月17日)。語尾の「そか」は「おろそか(疎か)」「あはそか(淡そか)」などのそれ(「~そか」に関しては「はるか(遥か)」の項)。動態が「おごし」の印象であること。壮大粛厳たる印象を表現しますが、この言葉は漢文訓読の世界で人工的に作られたもののようです。漢文訓読の世界で作られた特異な成り立ちの言葉はほかにもあります。

「世尊の行歩したまふ威容は齊(ひと)しく粛(おこそか)なること師子王の如し」(『彌勒上生経賛』)。

 

◎「おこづき」(動詞)

「おくこづき(奥こ突き)」。「こ」は、固いもので固いものを軽く打った際の音に由来する擬態。「奥」の印象で「こづく(こ突く)」、「こ」と突いた印象になる、こと。この言葉はさまざまな用い方がなされます。奥から「こづかれ(こ突かれ)」(刺激され)突発的に興奮したような調子にのったような状態になったり、内から小突かれたようにある瞬間体勢が挑むように昂奮硬直したようになったり、動作が体内で「こづかれ」たような、突っ掛かるような、不具合が起こっているような印象になったり、傷が奥で「こづかれ」たように、疼(うず)いたり。

「合戦の疵口おこづき」(「浄瑠璃」)。

「扨又(さてまた)よこに右へ引くによって、こしゆがみておこつく也」(『舞正語磨(ブシャウゴマ)』)。

 

◎「おこじょ」(動物名)

「をくろじろ(尾黒代)」の音変化。尾(の先)に黒色の占用域があるもの、の意。尾の先が黒の占用域ということは、他の部分の体色は変化するということです。これは動物名ですが、この動物は体表面の多くの部分の毛色が夏と冬で変化しますが、尾の先は一貫して黒い。