◎「おぎなひ(補ひ)」(動詞)

「おぎぬひあひ(補ひ合ひ)」。「~あひ(合ひ)」は、「言ひあひ」のそれのように、相互にそうすること。「おぎぬひ(補ひ)」はその項(下記)。「おぎぬひあひ(補ひ合ひ)→おぎなひ」は、相互に補(おぎぬ)ふこと。たとえば、「おぎぬひ(補ひ)」の場合、Aが切れたり穴が開いたりした布であり、Bはそれへの当て布であり。BをAに当て縫い付けることにより機能の完全性を回復・維持しようとする。「おぎなひ(補ひ)」の場合、Aは切れたり穴が開いたりした布でもありそれへの当て布でもあり、Bも切れたり穴が開いたりした布でもありそれへの当て布でもあり、双方が双方の機能を果たすことにより機能の欠損・欠陥をなくし機能の完全性を回復・維持しようとする。「不足分を補(おぎな)ふ」。「おぎのひ」という言い方もあります。

歴史的には「罪をおぎなふ」という言い方もあります。欠けたり不足している罪を満たすという意味ではありません。罪による人間的・社会的欠損・欠陥をなくし機能の完全性を回復します。

 

◎「おぎぬひ(補ひ)」(動詞)

「おきぬのぬひ(置き布縫ひ)」。布の穴があいたり切れたり弱ったりした部分に布を置き、それを縫い付けること。欠損・欠陥を補充・補強し原機能・期待機能を回復させること。古くは「おきぬひ」と清音でした(室町時代に濁音化します)。

「脱漏字に於て、後人之をおぎぬへと云ふこと尓(しか)り」(『伊呂波字類抄(序)』(鎌倉自体点(原文は漢文)):この書、内部には「色葉字類抄序」と書かれている。つまり『伊呂波字類抄』も『色葉字類抄』も同じ書)。

「冀(ねが)はくは遺闕(ヰケツ:欠けて不足した部分)におぎぬふこと有らむ」(『大唐西域記』)。

「補 オキヌフ オキナフ」(『伊呂波字類抄』(1100年代中頃から後半))。