◎「おき(奥き)」(動詞)の語源
「お」が遊離感を表現し(→「おき(置き)」の項)、遠く離れたところへ行くことを表現する「おき(奥き)」(「お」にアクセントがある)という動詞があったと思われます。また、その連用形名詞化「おき(奥き)」が、遥か彼方へ流れて行くような長い息(それが深い嘆きによるものであれ、長い生命を表すものであれ何であれ)を表すことも行われていたと思われます。『万葉集』歌番4458の「おきながかは(奥き長川:息もそして命も遥か彼方へ流れて行く長い川)」、歌番799の「おきそのかぜ(奥きその風:これは、おきしほのかぜ(奥き潮の風:遥か彼方へ流れて行く潮のような風))」。ただし、この動詞「おき(奥き)」は公認はされていません。
「大野山霧立ちわたるわが嘆くおきその風に霧立ちわたる」(万799:これは妻が亡くなった際の歌)。
「鳰鳥(にほどり)のおきながかは(於吉奈我河波)は絶えぬとも君に語らむ言(こと)盡(つ)きめやも」(万4458)。
神功皇后の名「おきながたらしひめのみこと」の「おきなが」は『日本書紀』や『古事記』や『常陸風土記』で「気長」や「息長」と書かれています。
◎「おき(沖)」の語源
「おき(奥き)」の連用形名詞化。遥か彼方の域。遊離感を生じさせているのは通常は海である。動詞「おき(奥き)」に関しては上記。