「ほかま(外間)」。子音脱落。表立った間(部屋)に置いておくことがためらわれ、目立たない「ほかのま(外の間)」に置いた者、の意。別名「かげま(陰間)」とも言います。これも、目立たない、陰(かげ)の間に置いておく者、の意。これらは 若衆文化系(下記※)の表現ですが、江戸時代、商家などで、(事実上、ある程度大きな家屋敷を構えるような商家などで)、屋敷内にそうした若衆系の男を(まるで妾を同居させるように)住まわせていた場合があった。その場合、その者が寝起きし生活する場は、家として別棟ではなくとも、完全に家族と同居というわけでもなく、屋敷内で居住空間・生活空間を別にする「ほか(外)」の「ま(間)」になっていた、ということです。家内に家事を手伝う者として入る者(事実上、女)も「おかま」と言われることがありますが(「下女を俗にお釜と云」(『俚言集覧』(いつ成立したと明瞭にいえないものですが、書かれたのは19世紀前半でしょう))、それも理由は同じです。
この語は後世では男色系の女っぽい男(さらには、そのような印象の男)を表す俗語になっています。また、男色系の性行為からの連想や、「お釜」と同音であり形態の類似からでしょう、「おかま」は尻を表す俗語にもなっています。
※ 「若衆文化」という語はあまりなじみはないかもしれませんが、性愛も含んだ美少年文化というようなものです。これは、(男性による)同性愛、や、ゲイ(gay:これは、不道徳、や、売春生活、をにおわせる俗語)、といった性衝動を基底にした概念では理解・把握はできません。
「お釜 〔大倭故事〕下女を俗にオ釜と云〇又俗に臀をオ釜と云………〇俗に衆道をオ釜といふ…………男色をお釜といふはいつ比(ごろ)より始りしや」(『俚言集覧』(1899年に原本『俚言集覧』に増補して出版されたもの。男色を…以下は増補部分に書かれている。増補部分には□に、増、の字を入れた記号が置かれている。正確には『(増補)俚言集覧』とでも書いた方が混乱がありませんね))。