◎「おかあさん(お母さん)」

「おかかさま(御母様)」の変化。二音目「か」の子音は退化した。「かか(母・嬶)」は下記。

 

◎「かか(母・嬶)」

「はは(母)」の子音変化。つまり、意味は母(はは(「はは(母)」に関しては長くなるのでその項:結論だけ言えば、この語は、先祖、それを具現する人、のような意。最も直接的に先祖を具現している人は自分がその人から生まれたその人です))。H音からK音への子音変化に関しては「のほきり(鋸)」→「のこぎり(鋸)」があります(「のこぎり(鋸)」は古くは「のほきり(鋸)」と言いました。「鋸……和名能保岐利」(『和名類聚鈔』)。「おかあさん」「かか様」「かあちゃん」「おっかあ」といった類型の言葉はすべてこれが基になっています。用いられ方としては、「かか」は俗語的なものとなり、「はは」は、伝統にのっとつた、公的なあらたまった印象になります。この「かか」により自分の妻や他家の主婦を言う俗語的表現もあります。

 

「京にて児童は○ハワサンと呼ひ年長しては母者人と称す 東国にてハ○かゝさんといふ」(『諸国方言物類称呼』(1775年): 「母者人」は、ははぢゃひと)。

「Faua.ハワ(母) 母親. Bogui;Caca;Fafa(かか)」(『邦訳日葡辞書』:「Bogui」は「母儀(ボギ)」か)。

「Fafa.1,faua.ハハ.または,ハワ(母) 母」(『邦訳日葡辞書』:「ハワ」は子音退行の一過程(下記※))。

「哀(あはれ)にもいまだ乳を飲む蜑(あま)の子のかかのあたりやはなれざる覧」(『九州道の記(キウシウみちのキ)』)。

「とと(父)よかか(母)よと朝ゆうにいふ」(「俳句」)。

「五郎兵衛かか、かしわもちくれる」(『天正日記』:これは五郎兵衛の妻であり五郎兵衛の家の主婦のような意)。

 

※ 古代では「は・ひ・ふ・へ・ほ」の子音は現代よりも明瞭だったと思われます、すなわち、「は・ひ・へ・ほ」は「ふぁ・ふぃ・ふぇ・ふぉ」のような音(オン)だったでしょう。その「ふぁ」の子音が退行化し「うぁ」のような音(オン)になると「わ」と表記されるような音(オン)になるわけです。