◎「え(e)のき(榎)」の語源
「いへのき(家の木)」。材質が堅く割れにくいので家を作るのに用いたことによると思われる。家(いへ)と言っても、柱を立て草(かや)を葺いた古代的なそれです。樹木の一種の名。ちなみに、「いへ(家):飯(いひ)得(え)」(3月5日)の「へ」はいわゆる「上代特殊仮名遣い」の甲類表記。「よのき」とも言う。あちこちがそれで家を建てたので「世(よ)の木」ということか。江戸時代、この木は一里塚に植えられました。日当たりの良いところに独立的に育つからということでしょう。これに関しては、徳川家康だかが、何を植えるか指示を求められ、(松以外の)『余(よ)の木』にしろと言ったら聞き間違えた、という有名な話がありますが、たぶん面白話でしょう。「榎」の字をこの樹木の名に用いるのは日本での用法。夏に、広がった枝の下が日陰になり涼しいかららしい。
◎「え(e)び(海老)」の語源
「えびり」。「り」の脱落。「え」は驚きの発声。「びり」は鋭く早い振幅振動を表現する擬態。危険を察知すると突然激しくそのように尾を振るその習性が印象に残ったことによる名。水棲生物の一種の名。
◎「えやみ(疫)」の語源
「いへやみ(い経病み)」。「い」は連続感を表現する。連続的に経過する病気。伝染病。また、間欠性の熱病(瘧(おこり))も「えやみ」と言われており、個人の時間連続的な病気も「えやみ」だったということである。「えのやまひ」とも言う。この「え」は「えやみ」の語頭がとられたもの。この「え」は「疫(漢音、エキ、呉音、ヤク、中華人民共和国音、イ(yi))」の音(オン)と言われることが一般。その意味は、病気、とくに伝染病、であるが、「伝染病病(や)み)にかかり」といった表現は冗長に思われる。「是(こ)の時(とき)に國(くに)に疫疾(えやみ)行(おこ)りて民(おほみたから)死(し)ぬる者(もの)衆(おほ)し」(『日本書紀』)。
◎「えら(鰓)」の語源
「えりは(襟端)」。人で言えば服の襟(えり)にあたる部分にある平面片状のもの、の意。魚類などの呼吸器である。古くは「あぎと」と言った。