◎「えたい(得体)」の語源
「えたいひ(得た言ひ)」。語尾のH音は退化している。「得(え)た」の「た」は助詞であり、「得(え)」は帰属を表現し、「えたいひ(得た言ひ)→えたい」は、なにごとかが、自己に帰属した、と認容し得る言い(言語表現)。これがまさにそれをあらわしている、と得心し得る言語表現。習慣的に、漢字では「得体」と書きます。「得体が知れない」(何とも言えない。理性的に判断しそれを言語表現することができない(つまり、理性的判断が成り立たないということです))。
「ゑたいも分らぬやたら縞(じま)」(「人情本」:どう表現したらよいのかもわからぬやたらな縞)。
※ これは「いへたいひ(言へた言ひ)」の可能性もあります。その場合、「いへ(言へ)」は可能を表現し、意味は「えたいひ(得た言ひ)」とさほど変わりませんが、「いひ(言ひ)」の活用語尾E音による可能表現が一般化する時期と「えたい(得体)」という語が一般化する時期の関係が確認できません。
◎「えだ(枝)」の語源
「えづら(枝連)」。語尾のR音は退化している。「づら(連)」は「つら(連)」の連濁であり、「つら(連)」は「つれ(連れ)」の情況にあるもの・こと。「つれ(連れ)」は時間的・空間的連動・同動を表現します。すなわち、「えづら(枝連)→えだ」は、「え(枝)」の、そこから連なって伸び、またそこから連なって伸び、という状態、およびそうした状態のもの。古くは、人や獣の手足を(樹木と比喩的に)「えだ」と表現することもありました。
「我が逃げ登りし…榛(はり)の木のえだ(延陀)」(『古事記』歌謡98)。
※「えたい(得体)」と「えだ(枝)」の二語がまとまっていることには深い意味はありません。ただ、どちらも文章が短いからです。