『日本書紀』歌謡56に「うらぐはのき」という表現があります。桑(くは)の枝を見てそうした言葉が歌に登場したそうですが、これは、桑の木は心材と辺材に明瞭な違いがあり、心材は赤も思わせるような色であり、そして桑材は緻密で硬いことでも知られる、つまり、桑には「うへくは(上桑):表面の桑」と「うらくは(裏桑):中心域の桑」があり(下記※)、「うらくは(裏桑)」は(ものごとの)核心部分、という意味でしょう。歌のその部分は「つのさはふ磐之媛(いはのひめ:皇后)が おほろかにきこさぬ うら桑(ぐは)の木」というものですが、事態は磐之媛(いはのひめ)がいい加減に聞き過ごしたりしない核心的なことだった→大変なことになった、ということ。皇后が、天皇(仁徳天皇)が八田皇女(やたのひめみこ)を納(めしい)れたことに怒り、天皇によりこの歌が生まれています。
※ 「うら(裏)」の項で触れましたが、古くは「うへ(上):表面」と「うら(裏):中心域」が対で言われました。
※ 桑材の写真があるサイトのURL
wp1.fuchu.jp/~kagu/mokuzai/kuwa.htm