◎「うむき(蛤)」の語源

「うめゐふき(埋め居吹き)」。その身で窪みを一杯に埋めたような印象で(水管で呼吸することが)何かを吹いているように見えることによる名。そうした生態の貝はほかにもいそうですが、その大きさや味による利用の一般性からからこの貝の名に固定していった。貝の一種の名。別名「はまぐり(蛤)」。

「…尋(たづ)ねて海の中に出(い)でます。仍(よ)りて白蛤(うむき)を得たまふ」(『日本書紀』)。

「海蛤……和名宇無木乃加比」(『和名類聚鈔』:『和名類聚鈔』には「蚌蛤……和名波萬久理」という項目もあります。「蚌蛤」の音(オン)は「バウカフ」)。

 

◎「うめ(梅)」の語源

「むもえ(睦萌え)」。睦月(むつき:月暦の一月(太陽暦ではほぼ二月))に萌えるもの、の意。「むめ」とも言います(というよりも、むしろ「むめ」の子音退化)。植物の一種の名。

この語は漢語「梅」の音(オン)と言われることが多いのですが、その音が「むめ」になるとも思われません。日本に伝わっている「梅」の音(オン)は呉音「マイ」漢音「バイ」。語音の事情は「うま(馬)」に似ています。これも「馬」の音(オン)とする説が多いです。馬も梅も大陸方面から渡来した印象があるからでしょうか。中国語が日本で動植物名として用いられている例はもちろんあります。たとえば「ラクダ(駱駝)」や「スイセン(水仙)」。「パンダ」は、中国の動物のような印象がありますが、ずっと西の方の動物であり、この語は中国語ではありません。どうもネパール方面の語のようです。中国語では「大熊猫(ターションマオ)」。日本で「パンダ」と言われているのは英語でそう言われているからでしょう。問題は「やぎ(山羊)」です。これは「羊(yang)」の音(オン)だという人もいるのですが、「羊」の音(オン)ならそれは「ひつじ(羊)」でしょう。「やぎ(山羊)」は「ヤウクゐ(羊狗居)→やぎ」でしょう。羊(ひつじ)のような狗(いぬ:犬)のようなもの、の意。ちなみに、中国語では「やぎ(山羊)」は「山羊(シェンヤン)」。