◎「うつし(現し)」(形容詞シク活用)の語源
「うつゆゆし(現由々し)」。「ゆゆ」の無音化。「うつ(現)」はその項。これは明瞭な現実感を表現します。それが「ゆゆし(由由し)」とは、衝撃的なほどのありありとした明瞭な現実感を表明します。
「うつしき青人草(あをひとくさ)」(『古事記』:いま現実にある人)。
「春の日のうら悲しきに後れゐて(一人残されて)君に恋ひつつうつしけめやも(現実感のある心理状態でいられるだろうか)」(万3752)。
◎「うつしおみ」の語源
『古事記』の雄略天皇の部分にある表現です。これは「うつしおみ(映し臆み)」でしょう。「うつし(映し)」は「うつり(映り)」の他動表現。「おみ(臆み)」は「おめ(臆め)」の他動表現。「うつしおみ(映し臆み)」は、明瞭にありありと自らを現し気持ちを臆(オク)させること。原文では眼前に神が現れ(下記※)「うつしおみ(于都志意美)ましまさむとは」と驚いています。
※ 『古事記』雄略天皇の部分に「言離之神」なる神が登場しますが、これは「ことさかのかみ」でしょう。この「さか」は動詞「さかり(逆り)」などの「さか(逆)」でもありますが、「そはか(背努果)→さか」(逆の努力成果)により反対向的に動けば分離も起こり「離」とも書かれる。原文は「吾者雖悪事而一言 雖善事而一言 言離之神 (吾(あ)は悪事(まがこと)も一言(ひとこと) 善事(よごと)も一言(ひとこと) 言離之神(ことさかのかみ))」。これは、不吉事(まがこと)も一言で吉事(よこと)に、吉事(よこと)も一言で不吉事(まがこと)になる言語効果の神ということでしょう。この神の名は「ひとことぬし(一言主)」だそうです。