◎「うつし(映し・写し)」(動詞)
「うつり(写り・映り)」の他動表現。「うつり(写り・映り)」はその項(6月3日)。明瞭な現実感をもって現すこと。
「釈迦の御足跡(みあと)石にうつし」(「仏足石歌」:「仏足石歌」は、一般に、薬師寺に現存する仏足石(753年)とセットになっている歌碑にある歌を言います。世の中に仏足石は他にもりますし、その「仏足石歌」調の歌は他にもあります)。
「池の水に影をうつしたる山吹」(『源氏物語』)。
「唐の西明寺の一院を……大安寺にうつさしめ給へるなり」(『大鏡』:模した。移(うつ)したわけではない)。
「写真をうつし」。「(原画を見つつ)他の紙にこれをうつし」。「(他の人の)作法をうつし」。「写真をうつし」は、そこで当然予定されている動作をすること、すなわち、写真機を作動させること、も意味する。
◎「うつし(移し)」(動詞)
「うつり(移り)」の他動表現。何かに「うつり(移り)」をすること(「うつり(移り)」はその項(6月3日)参照)。
「御陵(みはか)は大野の岡の上に在りしを後に科長(しなが)の大き陵(みささぎ)に遷(うつ)しまつりき」(『古事記』推古天皇)。
「梅(むめ)が香を袖にうつして…」(『古今集』)。
「かくなむとうつし語れど」(『源氏物語』:聞いた話をそのまま言い)。
「時をうつさず」(時を経過させず)。
「物の怪を(よりましに)うつし」(「よりまし」は霊などが憑(つ)く者)。
「風邪をうつし」。