◎「うづ(渦)」

「うづしほ(渦潮)」から生じた語。その語頭二音。

◎「うづしほ(渦潮)」

「うつふしほ(空生潮)うづしほ」。「ふ(生)」は発生感を表現します→「しばふ(芝生)」。「うつ(空)」は空虚。「うつふしほ(空生潮)うづしほ」は、潮(しほ)の流れに空虚が生じ、その空虚へ回転しつつ吸い込まれていってしまうような印象の潮(しほ)、の意。これは自然現象ですが、古来、鳴門海峡(徳島県と兵庫県の間)のそれが有名です。その語頭二音で表現される「うづ(渦)」はその「うづしほ(渦潮)」の運動状態のような運動態やその視覚印象表現を言います。

 

◎「うづ(珍)」

「うつゆ(現斎)」。「うつ(現)」も「ゆ(斎)」もその項(「うつ(現)」はありありとした現実感を表現し、「ゆ(斎)」は、けして人はたどりつくことのない経験的蓄積とそれによる神聖感を表現します)。「うつゆ(現斎)→うづ」は、現実的な明瞭感をもって現れた神聖感のある何か。

「伊弉諾尊(いざなきのみこと)曰(のたま)はく『吾(われ)御寓(あめのしたしら)すべき珍(うづ)の子(みこ)を生(う)まむと欲(おも)ふ』とのたまふ」(『日本書紀』)。

「うづの御手(みて)もち」(万973)。

 

◎「うづき(疼き)」(動詞)

「うちつき(打ち突き)」。打ち、突くような感覚・痛み、を感じること。痛みというほどではなく、ただ心情が打ち、突かれ、何かへ急き立てられるような思いになることも言います。急き立てられるような心情を表現する「うづうづする」もありますが、これは「うちつうちつ(打ちつ打ちつ)」でしょう。内側から打ち上げられ続けるような思いがする。

「はさまれて足はうづきの時鳥(ほととぎす)鳴きはをれどもとふ人もなし」(『古今著聞集』:「疼き(うづき)」と「卯月(うづき)」がかかっているわけですが、これは捕らえられ「問ひいましめて置きたりける」盗人の歌だそうであり、足に拘束具でもつけられていたのでしょうか)。

 

「うづたかし(堆し)」(形容詞ク活用)の語源

「うちゆたかし(内ゆ高し)」。「ゆ」は動態の起点その他を表現する助詞。内から高い。内側から盛り上がっている印象の表明。意味や価値を表現した場合、高尚・高貴、気高いといった意味にもなり、建物なら壮麗さや威厳をもってそびえたっていたりもしますが、高慢という意味にもなります。古くは「うつたかし」と清音と思われます。

「物は見えねど、うづたかく、ふたおほはれ、絹なども殊外(ことのほか)にあり」(『宇治拾遺物語』)。

「うづたかきことはりをさぐりたづねんとて…」(『宇治拾遺物語』:高尚な理を探り訊(たづ)ねようと)。

 

◎「うづき(卯月)」

月暦四月の名。これは「むつき(睦月)」の項でまとめられます。月暦(旧暦)の月名は全体をまとめて説明しないとわからないです。