(A)「うしおびふふき(牛帯びふふき)」(「ふふき」(「ふぶき」とも言う)は激しく吹くこと)と(B)「うしおびゆき(鵜為帯び行き)」があると思われます。

(A)「うしおびふふき(牛帯びふふき)」は、激しい運動により呼吸が苦しくなり唸(うな)るような声を発しつつ激しく呼吸をする状態になること、さらには、そのように獣が激しく息をするように吠えたりすること。「筑波の山を………熱(あつ)けくに 汗かきなげ………うそぶき登り」(万1753)。「虎うそぶけば風起こる」(『弥勒上生(ミロクジャウシャウ)経賛』)。

(B)「うしおびゆき(鵜為帯び行き)」は、鵜がそうしているような状態を帯び、ということであり、(喉(のど)の伸びた印象のある)鵜(う)の真似をしているかのような印象を帯びて動態が進行すること。どういうことかと言うと、詩歌や句を吟詠しているのです。やや上を向き喉を広げ、歌うように詩歌や句を発声します。「(催馬楽の)梅が枝をうそぶきて」(『源氏物語』)。自然界の音響がそのような印象になることも言います。「清風の長松にうそぶくがごとし」(『三蔵法師伝』)。「うそを吹く」や「うそに吹く」という言い方も現れます。「或はうそをふき、扇をならしなどするに…」(『竹取物語』)。口笛も「うそ」と言ったようです。「くち笛とはうその事也」(『言塵集(ゴンヂンシフ)』)。

(B)のような動態は人が何かに気づいていながらそしらぬ顔をするときにも現れ、「うそぶく」はそのような意味でも言われます。「(舟の舵(かぢ)とりは)とみに(早く)舟も寄せずうそふいてみまわし」(『更級日記』)。

この「うそぶく」は、「うそ(嘘)」という言葉の影響で、平然と嘘(うそ)をつく、や、大口をたたく、といった意味で用いられることも事実上あるようですが、それは元来の意味ではありません。