「いふすす(い伏す巣)」。「いふ」は「いふ(言ふ)」「ゆふ(言ふ)」が交替するような変化を生じつつ「う」になっています。「い」は動態の持続感・連続感を表現します。「いふすす(い伏す巣)うす」は、人が、持続的に伏(ふ)した状態になる(鳥の)巣(す)のようなもの、の意。これが「ふすす(伏す巣)」や「ふしす(伏し巣)」の場合、巣が伏していることを表現します。「い」による動態の持続感・連続感、それによる動感の強調により巣が伏すことは不自然なものとなります。つまり、「いふすす(い伏す巣)→うす」により人が巣に伏していることが表現される。「す(巣)」と表現されているのは窪(くぼ)みのある大きめの石です(これが鳥の巣を思わせる形をしている。考古学上の発掘遺物にそうしたものがあります(下記※))であり、その窪みに何か(たとえば木の実)を入れ、手に石など握り、それに伏した状態になりながらいつまでもその石で何かを砕いたり潰(つぶ)したり擂(す)ったりしているのです。また、原初的には杵(きね)は無く、手で握れる程度の石が用いられていたでしょう。後には、設置されそこで穀物その他さまざまなものを粉砕したりすりつぶしたりする道具はすべて「うす」と呼ばれるようになります。『古事記』には臼で酒を醸したと受け取れる表現があります(歌謡41)。昔はそのようなことにも用いられたらしい。

 

※ たとえば東京都西多摩郡秋多町出土の「石皿(いしざら)」と「磨石(すりいし)」。考古学的にはこれは「石皿(いしざら)」と呼ばれ、「うす」とは言われていません。