「うき(盞)」・「うき(水泥)」
◎「うき(盞)」の語源
「うきり(憂切り)」。「り」は脱落しました。「う(憂)」は形容詞「憂(う)し」の語幹。「うきり(憂切り)→うき」は、(酒により)その「う(憂)」がなくなるもの、無い状態になるもの、の意。これは盃(さかづき)を言います。「瑞玉盞(みづたまうき)に浮きし脂(あぶら)」(『古事記』歌謡100)。
◎「うき(水泥)」の語源
「うきゐ(浮き居)」。自分が浮いているような印象になる(自分が立っているその足場に確かな固定感のない)もの、の意味。非常に水分の多い泥地・沼地を意味します。「蘆根(あしね)這ふうき」(『拾遺和歌集』)。「西の四条よりは北、皇賀門よりは西に、人も住まぬ浮(うき)のゆうゆうとする一町余許有り」(『今昔物語』)。
「うけ(槽)」・「うけ(浮け)」(動詞)
◎「うけ(槽)」
「うかへ(うか器)」。「うか」は収穫物・産物を意味します(→「うか(神格)」の項・4月12日)。「へ(器)」は容器。「うかへ(うか器)→うけ」は、産物・収穫物を入れておく容器。起源的には土器でしょうけれど、木製の容器が「うけ」と呼ばれても不自然さはありません。「天宇受賣命(あめのうずめのみこと)………天の石屋戸(いはやと)に槽(うけ)伏せて踏み轟(とどろ)こし、神懸(かむがか)りして…」(『古事記』:「うけ」を伏せその上で踊ったらしい。相当に大きく丈夫なものなのでしょう。天照大神が磐戸(いはと)を閉ざして隠れてしまった際の出来事です)。
◎「うけ(浮け)」(動詞)
「うき(浮き)」の他動表現。浮かすこと。後に「うき(浮き)」と言われることが一般的な釣りや遊泳の道具は古く「うけ」とも言いました。「涙をうけて…(浮かべて…)」(『源氏物語』)。