◎「うげ(穿げ)」(動詞)

空虚感を表現する「う」による動詞。空虚感を表現する「あ」がU音化し客観的動態感が生じた「う」。「うげ(穿げ)」はなにかが空虚な状態になっています。穴があいたり、そのような印象で何かがなくなったりしていることを表現する。「波に当りて大にうげたる岩穴」(『太平記』)。古くは清音だったのでしょう。『万葉集』に「うけぐつ(宇既具都:穿け靴)」(万800)という表現があります。履きふるし穴があきぼろぼろになった靴です。

 

◎「うがち(穿ち)」(動詞)

「うげ(穿げ)」の他動表現。「うげ(穿げ)」の活用語尾がA音化・全体化・情況化し、それが活用語尾T音で表現され、T音は思念的に内容を確認します。思念的に確認されるとは、何かが現れ現実化していることが表現されるということです(下記※1)。そして思念的に確認される動態がI音で進行すれば他動表現になる(下記※2)。つまり「うがち(穿ち)」は何かを空虚感を感じる状態にすること。穴をあけたり(穴をあけるように通り抜けたり)、その印象で(意味的に)突き刺したりして考えを、外部からわかる穴をあけられたような印象にしたりします。「うがったものの見方」は、ものごとの、世間へ向けられた表面の一部を突き崩し穴を開け内部をさらすようなものの見方。世間の常識を崩し穴をあけてやろうと衣装などを工夫すれば、それは衣装に新奇に凝るという意味にもなります。古くは「うかち」と清音だったようです。動詞「うげ (穿げ)」は清音でした。

「夜(よる)険(さが)しきところを鑿(うが)ちて地道(したみち)を爲(つく)りて」(『日本書紀』)。

「人情のありさまをくはしくうがちて」(「滑稽本」『浮世床』)。

 

※1  たとえば、思念的なT音で対象的な存在感のあるO音で、つまり「と」で、「~と思ふ」と表現された場合、「~」が思念的に確認される。

※2  「もえ(燃え)」「もやし(燃やし)」などの場合は活用語尾(動感を表現する)S音のI音による進行で他動表現されているわけですが、「うげ(穿げ)」「うがち(穿ち)」の場合、(思念的な) T音のI音による進行で他動が表現されるのは「うげ(穿げ)」は「もえ(燃え)」のような、まるで生態のような、動態ではなく、擬態認識の動詞だからでしょう。その擬態認識が思念的に確認されそれを進行させれば他動になるということです。